イスラエル軍が地上侵攻したレバノンで、多くの住民が避難民となっている。だが、首都ベイルートなどでは避難所に入りきれず、屋外で夜を明かす人も相次いでいる。内戦が続く隣国シリアへ逃れる人も後を絶たず、人道危機の懸念が強まっている。
「家を出るときもミサイル攻撃があった。40~50発は飛んでいた」。レバノン東部で電話取材に応じた運転手、バクリー・アフメドさん(27)はこう語った。
イスラエル軍の空爆が激しさを増した9月下旬、家族とともにレバノン南部の自宅を逃れた。10月1日には地上侵攻も始まり、帰れる見通しは立たなくなった。「早く戦闘が終わってほしい。望むのはそれだけだ」
イスラエル軍は地上戦について「限定的」と説明している。だが、対抗するイスラム教シーア派組織ヒズボラは徹底抗戦の構えを崩しておらず、戦闘が長期化する恐れもある。東部バールベックに住むアリ・ヤヒさん(26)はネット交流サービス(SNS)による取材に「国際社会は助けてくれないだろう。我々は(パレスチナ自治区)ガザ地区のように見捨てられている」と嘆いた。
ロイター通信などによると、ベイルートでは学校などが避難所として開放されたが、収容人数が限られており、ビーチや路上で寝泊まりする人も少なくない。混乱が続く中、人道支援を行き渡らせるのも難しい状況だ。
国外で難民となった人たちもいる。国連難民高等弁務官事務所などによると、数十万人の避難民のうち、すでに10万人以上が隣国シリアに逃れた。
シリアでは2011年以来、親イランのアサド政権と反体制派の内戦で600万人以上の難民を出した。レバノンにも政府の推計で約150万人のシリア難民が暮らしていたが、イスラエル軍の地上侵攻を機に難民が「逆流」した形だ。
ただ、内戦を機にシリアを追われた難民は、帰国すれば危険が及ぶ可能性もある。南部からベイルートに避難したシリア難民の主婦、サラ・ナハスさん(32)は電話取材に「ベイルートではレバノン人が優先され、アパートも借りられなかった。シリアに行くこともできない。レバノン人の方が簡単にシリアに行ける」と語った。【カイロ金子淳】
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