イラン革命防衛隊は1日夜（日本時間2日未明）、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者らが殺害されたことへの報復として、イスラエルに対して複数の弾道ミサイルによる攻撃を実施した。大半はイスラエル軍により迎撃されたとみられるが、一部はイスラエル領内に着弾した。イスラエルのネタニヤフ首相は1日、「イランは大きな過ちを犯した。代償を払うことになる」と述べ、報復を示唆した。
イランによるイスラエルへの直接攻撃は、今年4月に300発以上の巡航ミサイルなどを発射して以来。ガザ地区やレバノンでイスラエル軍による戦闘が続く中、イランが直接イスラエルを攻撃したことで衝突が拡大しかねず、一気に緊張が高まっている。
イスラエルでは1日午後7時半（日本時間2日午前1時半）ごろ、エルサレムや商都テルアビブなどに警報が出され、軍は国民にシェルターなどへ避難するよう呼びかけた。攻撃は第2波まで続き、約1時間後に避難要請が解除された。
イスラエル軍はミサイル攻撃による負傷者は確認されていないとしているが、イスラエルメディアでは、パレスチナ自治区西岸地区でガザ出身の男性が死亡したほか、テルアビブでも2人が破片で軽傷を負ったと報じられている。
イスラエル軍などによると、発射されたミサイルは180発以上に上り、このうち「少数」がイスラエル中部と南部に着弾。中部では学校が損壊した。迎撃には米海軍の駆逐艦も参加した。
一方、イランメディアは、極超音速ミサイル「ファタ」が初めて使用され、イスラエルの迎撃ミサイルシステムを破壊したと報道。革命防衛隊は声明で、イスラエル軍のレーダー施設などを標的にしたと説明し、「90％が目標に命中した」と主張した。ただ、テルアビブ近郊などでは多くのミサイルが迎撃される様子が確認されている。
米国のサリバン大統領補佐官（国家安全保障問題担当）は1日の記者会見で「この攻撃は打ち負かされ、効果はなかったように見える」と述べる一方、「事態の重大なエスカレーションだ」との認識を示した。ただ、イスラエル側からイランへの「報復」については「イスラエルとの話し合いを続ける」と述べるにとどめた。
バイデン大統領は記者団に「米国は完全にイスラエルを支持している」と表明。ハリス副大統領も「イランは中東を不安定化させる危険な存在だ。イスラエルは我々の支援を受けて攻撃を撃退できた。我々の共同防衛は効果的で、多くの命を救った」と強調した。
ロイター通信によると、イラン政府高官は「（イスラエルを支援する）米国には攻撃の直前に外交チャンネルを通じて警告した」と主張。友好関係にあるロシアにも事前に知らせたとしている。一方、米国防省やイラン国連代表部は事前通知について否定している。
イランでは7月末、首都テヘランに滞在していたハマスの最高指導者ハニヤ氏が宿泊施設でイスラエルによるとみられる爆発により死亡。9月27日にはレバノンの首都ベイルート南郊でヒズボラの本部がイスラエル軍の空爆を受け、最高指導者ナスララ師や革命防衛隊の幹部が死亡した。
イランのペゼシュキアン大統領は1日、X（ツイッター）への投稿で「イランの利益と市民を守るため」に攻撃したと説明し、「戦争は望んでいないが、いかなる脅威にも断固たる対応を取る」とけん制した。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地、ワシントン松井聡】
鄭重声明：本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。
