イスラエル軍の空爆を受けた現場=ベイルート郊外で2024年9月27日、ロイター

 イスラエル軍が27日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの「中央本部」を空爆したことで、ヒズボラの出方が焦点となっている。イスラエル軍に対して激しい報復に出れば、紛争が激化するのは必至だからだ。ヒズボラを支援するイランもイスラエルに対する圧力を強めるのは確実で、中東情勢は混迷を深めている。

 ヒズボラは、中東各地でイランが支援する「抵抗の枢軸」と呼ばれる武装組織の連合体の主要組織だ。1982年、イスラエルのレバノン侵攻をきっかけにイラン革命防衛隊の指導で創設され、長年にわたりイスラエルと敵対を続けてきた。

 2006年にはイスラエル兵を拉致したのを機にイスラエル軍のレバノン侵攻を招いたが、約1カ月にわたり戦闘を続け、イスラエル領内へのロケット弾攻撃を繰り返した。

 ヒズボラにとって、イスラエルに対する「抵抗」は存在意義とも言える。昨年10月にパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まってから、「抵抗の枢軸」の他の組織と同様、イスラエルに砲撃を続けてきたのもそのためだ。

ヒズボラが放ったロケット弾を迎撃するイスラエルの防空システム「アイアンドーム」=イスラエル北部ハイファから2024年9月27日、ロイター

 ただ、この1年間のヒズボラによる攻撃は、あくまでもハマスに連帯を示し、イスラエル軍を背後からけん制することを目的としており、攻撃の規模やイスラエル側の被害は限定的だった。

 ヒズボラにとっては、イスラエルが通信機器の一斉爆発や大規模な空爆によりここまで衝突を拡大させてきたのは、誤算だった可能性もある。

 イスラエル軍は27日の空爆でヒズボラの「中央本部」を狙い、組織の中枢を破壊する意図を明白にした。ヒズボラから見れば「一線」を明確に越えられた形で、報復に出る可能性は高い。

 ヒズボラはイスラエル全土を射程に収めるミサイルを持っており、保有するロケット弾も15万発に上るとされる。これまでのイスラエル軍の空爆で戦闘能力がどれほど被害を受けたのかは不明だが、イスラエルに対する攻撃の規模や範囲を広げる余力はまだ残っているとみられる。

 ただ、ヒズボラは27日夜(日本時間28日朝)時点で、空爆に関する公式の声明を出していない。通信機器が打撃を受けた中、中枢を空爆されたことで、内部で混乱が広がっている可能性もある。【カイロ金子淳】

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