米国で26日までの1週間に5件の死刑が執行された。AP通信によると、1週間の執行件数が5件に上ったのは2003年7月以来。その中には中西部ミズーリ州で死刑囚が冤罪(えんざい)を訴え、被害者の遺族や検察官も執行に反対していたケースがあった。
AP通信によると、20日以降に南部サウスカロライナ、テキサス、オクラホマ、アラバマ、ミズーリの各州で1件ずつ死刑が執行された。
ミズーリ州では24日、1998年に女性が自宅で強盗犯に殺害された事件で、死刑判決を受けた黒人のマーセルス・ウィリアムズ死刑囚(55)の刑が執行された。死刑囚は捜査段階から一貫して無罪を主張。元交際相手や知人が「(死刑囚が)殺害を認めていた」と警察に証言したが、物証はなかった。
弁護側は現場に残された血のついた足跡や指紋、髪の毛は、いずれも死刑囚と一致しなかったと主張。「元交際相手や知人は犯罪歴があり、自分の事件の情状酌量や、捜査協力の報奨金が目当てだった」と訴えた。地元の検察当局も今年1月、捜査や裁判に問題があった可能性を指摘し、判決を再検討するよう裁判所に求めた。
弁護側は、現場に残されていた刃物から検出されたDNAの鑑定で無罪を証明する道を探っていた。ところが、今年8月、当時の検察当局者のDNA型と一致したことが判明。捜査当局が証拠品をずさんに扱っていた疑いが浮上したが、死刑囚とは別の「真犯人」のDNAが検出されなかったことで、無罪の証明にはつながらなかった。
検察は死刑囚に対して、死刑を回避して、終身刑を受け入れる司法取引を提案した。被害者の遺族も取引内容に同意。しかし、州司法長官が反対したため、司法取引も頓挫した。弁護側はさらに死刑執行停止を求めていたが、連邦最高裁が24日に訴えを退け、即日執行された。
米国では72年に連邦最高裁が「死刑は憲法違反」との判断を示し、各州が死刑を廃止した。だが76年に最高裁が判断を覆したため復活させる州が相次いだ。非営利団体「死刑情報センター」によると、全米50州のうち27州と連邦、軍に死刑制度がある。ただ、制度があるうちの6州と連邦は死刑執行を停止している。76年以降の死刑執行件数は26日に1600件に達した。【ワシントン秋山信一】
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