国賓待遇で、米国を公式訪問している岸田文雄首相は11日(日本時間12日)、米首都ワシントンの米上下両院合同会議で「未来に向けて 我々のグローバル・パートナーシップ」と題して演説した。首相は「自由と民主主義は現在、世界中で脅威にさらされている」と指摘し、「日本国民は自由の存続を確かなものとするために米国と共にある」と表明。「自由と民主主義」をキーワードに、米国との協調姿勢を鮮明にした。
上下両院合同会議での演説は2015年の安倍晋三首相(当時)以来。日本の首相としては2人目になる。
岸田首相は世界情勢について、中国やロシアを念頭に「人類史の次の時代を決定づける分かれ目にいる。私たちとは全く異なる価値観や原則を持つ主体からのあらたな挑戦に直面している」と説明。特に東アジア情勢では「中国の対外的な姿勢や軍事動向は、日本の平和と安全だけでなく、国際社会全体の平和と安定にとっても、これまでにない最大の戦略的な挑戦をもたらしている」と強調した。
第二次世界大戦以降、米国が「経済力、外交力、軍事力、技術力を通じて戦後の国際秩序を形づくり、自由と民主主義を擁護した」と評価。そのことが、日本などの安定と繁栄につながったと表明した。
一方、「一部の米国民の心の中に世界における自国のあるべき役割について、自己疑念があることも感じる」との認識を示した。そのうえで「ほぼ独力で世界秩序を維持し、孤独感や疲弊を感じている米国民に問いかけたい。米国が助けもなく、たった一人で国際秩序を守ることを強いられる理由はない」「米国の最も親しい『トモダチ』として、日本国民は自由の存続を確かなものとするために米国と共にある」と連携を呼びかけた。
日米同盟における日本の役割の変化にも言及した。「日本は控えめな同盟国から、外の世界に目を向けて強く関わっていく同盟国へと自らを変革してきた」とし、防衛費の大幅増額などを進めたことで「日米同盟の抑止力はかつてなく強力だ」と強調。「自由と民主主義という名の宇宙船で、米国の仲間の船員であることを誇りに思う。共にデッキに立ち、任務に従事する準備はできている。米国は独りではない。日本は共にある」と述べた。
経済面では、日本が世界最大の対米直接投資国であることを説明した。「約8000億ドル(約120兆円)を投資し、米国内で約100万人の雇用を創出している」と強調。岸田政権が「新しい資本主義」を掲げ、日本国内は賃上げや設備投資、株価が30年ぶりの高水準になっているとし「成長志向の日本経済は、米国への更なる投資に拍車をかける。日米両国は今後、世界経済を後押しし、力強い成長軌道へと導くだろう」とアピールした。
最後には「私は日本の堅固な同盟と不朽の友好を誓う。日本は米国のグローバル・パートナーであり、この先もあり続ける」と強調した。【ワシントン小田中大】
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