米大統領選の民主党候補、ハリス副大統領は25日、米MSNBCのインタビューで、日本製鉄による鉄鋼大手USスチール買収に関して「米企業の米国の労働者が鉄を製造することは、経済だけでなく、国家安全保障の観点からも非常に重要だ」と述べた。米政府は買収計画に国家安保上の懸念がないか審査しているが、ハリス氏は改めて買収反対の意向を強調した。
ハリス氏は25日にUSスチール本社がある東部ペンシルベニア州ピッツバーグを訪問した。全米鉄鋼労働組合(USW)の組合員らとの面会では「USスチールは米国内で所有、運営されるべきだ」との立場を改めて伝えた。
またインタビューで「買収計画がうまくいかなければ、(USスチールで)仕事を失う人が出てくるとも言われる。どちらが重要なのか」と問われると、「最も重要なのは、米国の労働者が米国で製鉄する力を維持することだ」と答えた。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大やサプライチェーン(供給網)の混乱で、外国企業への過剰依存のリスクが浮き彫りになったことを受けて、「米国を拠点とする製造業について計画的でなければならない。鉄は優先すべき製品の一つだ」と強調した。
一方、USスチールとUSWが合同で委員を選任した仲裁委員会は25日、日鉄の買収計画の適格性を認めた。しかし、米メディアによると、USWは仲裁委の決定を不服として、依然として買収に反対する方針を示している。
買収計画を巡っては、米政府機関の対米外国投資委員会(CFIUS)が安保上の懸念に関する審査を続けている。日鉄が9月下旬の審査の期限間際に審査を再申請したため、判断は大統領選後に先送りされる見通しだ。大統領選に出馬しているハリス氏と共和党のトランプ前大統領はともに買収に反対している。USスチールは買収が頓挫した場合、本社移転や工場閉鎖が必要になる可能性を指摘している。【ピッツバーグ秋山信一】
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