23日、英ドーバー港に到着した難民申請者とみられる人々(ロイター)

【ロンドン=黒瀬悦成】英上院は23日未明、不法入国した難民申請者をアフリカのルワンダに移送するための法案を可決した。スナク首相によると、早ければ7月にも移送が開始される。スナク氏率いる与党・保守党は来年1月までに実施の総選挙で苦戦が予想され、選挙前に厳格な移民対策を打ち出すことで支持拡大につなげたい考えだ。

不法入国者のルワンダ移送計画を巡っては、昨年11月に英最高裁が人権侵害などを理由に違法と判断。同年12月に政府が提出した今回の法案は、ルワンダが難民申請者にとり安全な国だと明記し、最高裁判断の適用回避を図った。

英国ではアフリカや中東などから小型ボートで英仏海峡を渡る不法移民の数が増加している。スナク政権としては移送計画が移民流入を抑止する効果を上げるよう期待をかけている。

一方、英内務省が昨年6月に発表した試算では、移民の移送に1人あたり16万9千ポンド(約3240万円)が必要で、移民を英国に一時滞在させるよりも6万3千ポンドも費用がかさむとされ、野党の労働党は人権問題に加えて財政圧迫を理由とした批判も強めている。

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