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 蚊が媒介する感染症「デング熱」が南米を中心に大流行している。感染拡大を防ぐべく、ブラジルでは年間50億匹を生む“蚊工場”が動き出そうとしている。

■“蚊よけスプレー”買占め&価格高騰

パンアメリカン保健機関 バルボサ事務局長 この記事の写真 パンアメリカン保健機関 バルボサ事務局長
「おそらくアメリカ大陸で、過去最悪のデング熱シーズンになるだろう」

 先月、そう警告を発していたパンアメリカン保健機関が今月18日、蚊が媒介し、高熱などの症状を引き起こす「デング熱」の感染状況が「非常事態」に達したと発表した。

デング熱にかかった息子の母親
「この子は立つことができません。体の痛みと頭痛があり、熱は40℃まであがりました。きのうから、この状態が続いています」 医師
「感染者数は、前年と比べて3倍に増加しています」 中南米を中心に猛威をふるう「デング熱」

 「デング熱」は中南米を中心に猛威をふるっていて、南北アメリカ大陸では、今年に入ってからの感染者数がすでに520万人に上っている。

 過去最悪だった去年の年間およそ456万人を早くも超えているのだ。

 そんな中、アルゼンチンではあるものが店頭から消える事態に。それは“蚊よけスプレー”だ。

スーパーの店主「『在庫はないです』というと、怒り出すお客さんもいます」 スーパーの店主
「どこにも在庫がないんです。お客さんは“蚊よけスプレー”を探し回っています。店員が『在庫はないです』というと、怒り出すお客さんもいます」 ブエノスアイレスでは、すべての店舗で“蚊よけスプレー”が売り切れ

 2月以降、卸売業者が“蚊よけスプレー”の価格をつり上げ、転売目的の買占めも相次ぐ事態だという。

ネット上では、10倍の値段で取り引きされるケースも

 現在、首都ブエノスアイレスでは、すべての店舗で売り切れ。ネット上では、10倍の値段で取り引きされるケースまで出ている。

 当局は、海外からの“蚊よけスプレー”の輸入手続きを簡略化するなど、対策に追われている。

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■“蚊工場”…ボルバキア蚊を自然界へ

■“蚊工場”…ボルバキア蚊を自然界へ

「スーパー耐性蚊」なるものが確認された

 デング熱の感染拡大の背景には、新たな「蚊」の存在もあるようだ。

 国立感染症研究所が2022年に発表した論文によると、デング熱を媒介するネッタイシマカを東南アジアで調査したところ、殺虫剤成分が効かない「スーパー耐性蚊」なるものが確認されたという。

 カンボジアのプノンペンでは、この「スーパー耐性蚊」が70%以上を占めるようになっていて、物流などと共に生息域が拡大し、デング熱がさらに広がることも懸念されているそうだ。

「蚊を蚊で駆除する」という対策

 こうした状況に対応すべく進められているのが「蚊を蚊で駆除する」という対策だ。

 現在、ブラジルでおよそ29億円をかけて年間50億匹の蚊を飼育する“蚊工場”が建てられている。

ボルバキア蚊はデング熱を媒介しにくくなるという

 ここで飼育されているのは、ボルバキアという細菌に感染した「ボルバキア蚊」。BBCによりますと、ボルバキアは蚊の体の中でデングウイルスの増殖を抑えるため、ボルバキア蚊はデング熱を媒介しにくくなるという。

 このボルバキア蚊を、どのように利用するのか。

 リオデジャネイロにすでにあるボルバキア蚊の飼育施設では、容器の中で無数のボルバキア蚊が育てられている。ボルバキアは子世代に遺伝するため、これらの蚊を自然界に放ち、自然界の蚊を交配させ、デング熱を媒介しにくい蚊の割合を増やしてく試みとなっている。

WMPによると、すでにボルバキア蚊を放った地域ではデング熱の症例数が76%減少

 “蚊工場”の建設を進めるWMP(ワールド・モスキート・プログラム)によると、すでにボルバキア蚊を放った地域ではデング熱の症例数が76%減少したという。

 さらに、ボルバキア蚊はジカ熱など他の感染症の抑制にも有効だといい、世界から注目されている。

ボルバキア蚊による影響は限定的であり、リスクは低いとの結論

 一方で、自然界にいないボルバキア蚊を放つことには、生態系への影響などの懸念もある。

 ただ、去年アメリカの国立医学図書館に寄せられた論文では、ボルバキア蚊による影響は限定的であり、リスクは低いとの結論を出している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年4月23日放送分より)

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