トランプ前米大統領(AP=共同)

【ニューヨーク=平田雄介】トランプ前米大統領(共和党)の不倫口止め料を巡る会計不正処理事件は22日、東部ニューヨーク州地裁で、検察側が冒頭陳述を行う。11月の大統領選で返り咲きを狙うトランプ氏は裁判を「政治的迫害だ」と断じている。今後本格化する審理では、ブラッグ地方検事(民主党)を責任者とする検察側が、政治色を排した有罪立証を行い、捜査の公正さを示せるかが焦点だ。

米国では地方検事が公選で選ばれる。裁判の公正さは、市民から成る12人の陪審員が担保する仕組み。陪審員は、不偏不党の立場で証拠に基づいて有罪か無罪かを判断し、全員一致で評決を下す。検察側が有罪を勝ち得るには、陪審員が法に照らして有罪と納得する立証を行う必要がある。

トランプ氏は2016年の前回大統領選を前に、不倫疑惑の発覚を防ごうと元ポルノ女優への口止め料13万ドル(約2千万円)の支払いを弁護士に立て替えてもらったとされる。当選後に費用を弁済した際、一族企業の業務記録を改竄(かいざん)したとして34の罪状に問われている。

通常、業務記録改竄は禁錮1年未満の軽犯罪として扱われるが、検察側はトランプ氏に「別の犯罪」を隠す意図があったとして禁錮4年以下の重罪に問うた。検察側は「別の犯罪」が何かを明らかにしておらず、起訴内容に不透明さが残る。

米メディアでは「別の犯罪」に関する推定が飛び交い、検察への評価は割れている。

ニューヨーク・タイムズ紙は「選挙資金法違反を隠すための文書偽造には訴追例がある」と、検察を支持する寄稿を掲載した。AP通信は、大統領選が連邦レベルの選挙であるとし、州地裁で罪に問うのは「異例の法理論だ」と懐疑的に報じている。

今回の陪審員は男性7人と女性5人。選任手続きでは、検察側と弁護側も質問を行い、「外したい候補」を指定した。

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