5年前、香港の市民らが民主化を求めて行った反政府デモ。最前線でデモを撮影した映画が公開され、イギリスに亡命した監督が香港への思いを語りました。

香港で2019年6月に始まった民主化デモ。学生ら多くの若者が参加し、11月には警察とデモ隊による激しい衝突に発展しました。

香港の自由のために闘う若者らを90日間にわたり最前線で記録した映画が先月30日、日本でも公開され、監督のトウィンクル・ンアンさんが亡命先のイギリスから来日しました。

トウィンクル・ンアン監督
「撮影していたら(警察から)催涙弾を撃たれました。呼吸ができなくなり、動けなくなったので、逮捕されるのではと思いました」

周囲にいたデモ隊の若者に救われたことから、事実を映画にして世界に広めようと決意したといいます。

この映画のナレーターを務めたアルさんもデモの現場にいたひとりです。いまも当局に追われる可能性があるため、顔や声を隠すことを条件に取材に応じました。

ナレーター アルさん
「壁に向かってひざまずいたら、警察官が暴力を振るい始めたんです」

大学生だった2019年、香港理工大学で行われたデモに参加した際、警察官から暴行を受け、その後、暴動罪で逮捕されました。

保釈されたアルさんはデモに参加できないため、かわりにナレーターとして映画製作に参加することで「闘い続けている人たちの助けになりたかった」といいます。

映画を観た人は…。

観客
「(デモが)ここまで激しかったんだっていうのは、全く想像もしてなかったです」

香港では今年3月、「国家安全条例」が施行され、反政府的な言動への取締りが強化されています。

「いまの香港では愛国主義的なことしか言えなくなってしまった」と嘆く監督のンアンさん。当時の仲間のなかには、香港政府の圧力を恐れるなどしてデモや集会への参加に消極的になってしまった人もいるといいます。

トウィンクル・ンアン監督
「『海外で集会をやる』と言っても『もう知らせてほしくない』と、『今も香港にいるから』と言われます。もう変えられないから受け入れるしかないという感じ。心が痛いです」

ンアンさんは、映画に登場する人々はいまも収監されるなどして自由を失っていると話し、映画を通して彼らの声を伝えたいとしています。

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