米国の首都ワシントン近郊にあるアーリントン国立墓地で、退役軍人らとともに献花するトランプ前大統領=2024年8月26日、AP

 米共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領(78)が8月26日、首都ワシントン近郊のアーリントン国立墓地で、2021年にアフガニスタンで起きたテロ事件で犠牲になった米兵の慰霊行事に参加した際、写真撮影を巡って墓地の職員と同行者の間でトラブルが起きた。

 墓地では「政治活動」が禁止されているが、トランプ氏側は追悼が目的だったと反論。民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)が「神聖な場所で無礼なことをした」と批判するなど、論争はエスカレートしている。

 トランプ氏は遺族の招待を受け、事件から3年になるのに合わせて慰霊行事に参加。無名戦士の墓で献花した後、アフガンやイラクの戦没者らが葬られた区域に移動した。その際、職員が墓地内では「政治目的での写真撮影」が禁止されていることを同行者に注意して口論に発展した。

 墓地を管理する米陸軍によると、同行者は職員を脇に押しやって撮影を続行した。トランプ氏側は撮影した映像をソーシャルメディアでも公開。テロ事件を含めた米軍のアフガン撤収時の混乱について、民主党のバイデン政権やハリス氏の責任を追及するのに利用している。

 陸軍の広報担当者は声明で「政治活動の禁止区域のことを再確認する職務を果たそうとして、不当に攻撃されたのは残念だ」と批判。一方、トランプ氏側は「撮影の許可は得ていた。厳粛な行事のさなかに、チームの一員が身体的に妨害されることがあった」と反論している。

 トランプ氏側は墓地訪問は慰霊が目的であり、撮影も遺族側の要望に沿ったことだとしている。11月の米大統領選に向けた政治的な宣伝に利用している面は否めず、ハリス氏は8月31日のXへの投稿で「現役や退役の軍人、軍人の家族は、最大限の敬意と感謝を払われるべきだ。この神聖な義務を果たせない人物は、二度と大統領になるべきではない」と批判した。

 トランプ氏は8月、文民勲章が軍人勲章より「ずっと良い。(軍人の)名誉勲章を受けるのは、銃弾で何度も撃たれて不健康になったか、亡くなった人だからだ」と発言し、退役軍人らの不興を買った。

 過去にも戦没者を「負け犬」「まぬけ」とののしったと報じられたことがあり、ハリス氏は9月10日のテレビ討論会に向けて、トランプ氏の「軍人への非礼」を追及する構えだ。【ワシントン秋山信一】

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