レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は25日、テレビ演説を行い、この日のイスラエルに対する大規模な攻撃は「計画通り正確に完了した」と述べた。民間人の居住地やインフラ施設は標的から外したとも語った。軍事施設のみを狙ったと強調することで、イスラエルとの全面的な衝突に拡大させる意図はないことを示唆した形だ。
25日の攻撃では、ヒズボラはイスラエル国内の11カ所の軍事施設に対して320発以上のロケット弾や無人機を発射した。一方、イスラエル軍は事前に攻撃を察知し、ヒズボラの攻撃が始まる約30分前にレバノン南部などを空爆。ロイター通信などによると、イスラエルで少なくとも1人、レバノンで3人が死亡した。ヒズボラのロケット弾は多くが迎撃されたとみられ、軍事施設にも大きな被害はなかったとされる。
ナスララ師は演説で、商都テルアビブ市内や国際空港を標的にする意図はなく、近くの情報機関の拠点を狙ったと説明。事前にイスラエル軍による空爆を受けたことは認めたが、今回の攻撃とは無関係の拠点に対するものだったと主張し、作戦の「成功」を強調した。
また、ロイター通信は25日、外交関係者の話として、ヒズボラとイスラエルが間接的にメッセージを交換したと報じた。いずれも今回の攻撃については「終了した」と考えており、紛争をさらに拡大させることは望んでいないことを伝えたという。
ただ、ナスララ師は演説で、さらなる報復もあり得ると主張。イスラエルのネタニヤフ首相も25日の交戦について「(レバノンとの国境付近の)北部の状況を変え、避難民を安全に帰還させる新たな一歩だ。これで終わりではない」と語った。断続的な交戦は今後も続く見込みで、紛争が激化する可能性は残る。ヒズボラを支援するイランも、7月末にテヘランでイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が殺害されたことへの報復を宣言しており、緊張が続いている。【カイロ金子淳】
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