米下院は20日、ウクライナ支援のための緊急予算案を可決。米議会で記者団に話す共和党のジョンソン下院議長(ロイター)

【ワシントン=渡辺浩生】米下院は20日、ウクライナに対する緊急支援予算案を採決し、野党・共和党の一部が反対したものの、超党派の賛成で可決した。兵器不足でロシアの侵略に苦戦を続けるウクライナへの軍事支援が継続されることになった。

共和党が僅差で多数の下院で賛成311、反対112。可決の瞬間、賛成派はウクライナ国旗を振って祝福した。予算案は上院での可決を経て、バイデン大統領の署名で成立する。

支援額は約600億ドル(約9兆2400億円)。武器弾薬の供与、米軍の在庫補充、欧州展開の米軍向けの財源が盛り込まれた。約95億ドル分の経済支援は、借款で行う。ウクライナ支援は「無償でなく貸し付けにすべきだ」とのトランプ前大統領の主張を踏まえ、トランプ氏に近い共和党強硬派に配慮した。

緊急予算はバイデン氏が昨年10月、議会に申請したが、共和党強硬派の抵抗で審議は迷走し、その間にウクライナ向け財源は枯渇。武器支援が滞り、ウクライナ軍は露軍の攻勢に押されていた。強硬派の一部は、同党のジョンソン下院議長への辞任圧力を強めて採決の阻止を狙ってきた。

20日にはイスラエル、台湾への緊急支援予算案も採決。3つの国・地域で総額950億ドルにのぼる。共和党内でイスラエルや台湾向け支援の支持は根強く、ジョンソン氏はもともと一括されていた予算案を3本立てにすることで、強硬派を押さえこんだ。

イスラエルには、イランや親イラン勢力の攻勢に対する防空システムなどを供与。台湾などインド太平洋地域には、対中抑止力強化のための軍事支援を盛り込んだ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。