イスラエルの初の直接攻撃や、イランの”核施設への反撃示唆”でかつてない緊張状態にある中東地域。イスラエルで語られてきた旧約聖書の英雄にちなんだ”核戦略”とは?そもそも、両国はどのようにして対立が先鋭化してきたのか…報復の連鎖で起こり得る今後の展開とは?手作り解説でお伝えします。
イスラエルの英雄「サムソン」
イランとイスラエルの攻撃の応酬に対し、世界中から自制を求める声が高まっているのは、なぜなのでしょうか。
旧約聖書に登場するイスラエルの英雄で、とてつもない怪力の持ち主「サムソン」です。その宿敵であるペリシテ人。ちなみにこの「ペリシテ」が、今のパレスチナという地名の由来になったそうです。
このサムソンの最期ですが、神殿の巨大な柱を素手で破壊し、大勢のペリシテ人たちを巻き添えに自らも建物の下敷きになって死んだとされているんです。
イスラエルには、核兵器を使う際には、このサムソンのように自らも滅びることを覚悟して敵国に壊滅的な打撃を与える戦略、その名も「サムソンオプション」という考え方があると語られてきました。
核保有のイスラエルとイランの軍事力
核保有についてイスラエルは、否定も肯定もしない戦略をとっていますが、90発の核弾頭を保有しているとみられています。
一方のイランですが、核兵器は保有していないものの、極超音速型を含む弾道ミサイルや巡航ミサイルなど数千発のミサイルを保有しているとされ、中東地域で際立った軍事力でイスラエルと対峙してきました。
そもそもイランとイスラエルはなぜ対立?
そもそも両国は、どのようにして対立が先鋭化してきたのでしょうか。
イランは、45年前まで続いた世俗的なパーレビ王朝の時は、親米でイスラエル寄りの国でした。
しかし、1979年の革命でイスラム教に基づく体制が樹立されると、パレスチナを占領するイスラエルを「敵」と位置づけました。
そして、パレスチナの「ハマス」や、レバノンの「ヒズボラ」などイスラエルと武装闘争を続ける中東各地の組織を支援することで、イスラエルを間接的に攻撃してきたのです。
一方のイスラエルも、イランの要人を暗殺したり、中東各地にあるイランの軍事拠点を攻撃したりするなど、軍事的緊張が続いてきました。
双方の直接攻撃による今後の展開は?
ただ、イランもイスラエルも、これまでは互いの領土への直接的な攻撃はしないことによって、全面対決へとエスカレートする事態を避けてきました。しかし、今回ついに、直接攻撃の応酬となってしまったのです。
今後の展開について慶應義塾大学の田中浩一郎教授は「イランには”原発などで利用する”ウラン濃縮施設などがあるが、イスラエルは”核兵器の転用”を恐れていて、攻撃する可能性が高い。もし攻撃されれば、イランも『イスラエルの核施設を攻撃する』と宣言しているので、全面戦争となるリスクもある」と指摘します。
中東地域、更には世界規模へと紛争が広がる可能性が現実味を帯びている中、報復の連鎖を断ち切る術はあるのでしょうか。
(「サンデーモーニング」2024年4月21日放送より)
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