会見するマドゥロ大統領(中央)=カラカスで2024年8月9日、AP

 南米ベネズエラ大統領選で、独裁色を強める反米左派マドゥロ大統領が勝利したとの発表に疑念が持たれている中、隣国ブラジルの左派ルラ大統領が15日、再選挙を提案した。地元ラジオ局の取材に自身の見解を述べた。

 地域大国ブラジルは現時点でマドゥロ氏の勝利を認定していない。ルラ氏は、マドゥロ氏に「良識」があれば、超党派で構成される新たな選挙管理当局の下、再選挙を呼び掛けると語った。マドゥロ氏は「ブラジルや世界に対して説明する義務がある」とも述べた。

 ルラ氏の提案にはバイデン米大統領も支持を表明した。米メディアによると、バイデン氏は15日、報道陣に再選挙を支持するか問われた際、「そうだ」と答えた。ただ、それ以上は語らなかった。

 7月下旬に実施されたベネズエラ大統領選では、マドゥロ氏の影響下にある選挙管理当局が各投票所の詳細な集計結果を公表しないままマドゥロ氏の勝利を発表し、主要7カ国(G7)など国際社会から批判を浴びた。事実上の一騎打ちに臨んだ野党連合の統一候補ゴンサレス氏の陣営は、不正選挙だとしてマドゥロ政権を批判。全国に設置された投票所の8割超の集計結果を独自入手した結果、ゴンサレス氏が勝利したと主張した。

 一方、ゴンサレス陣営は再選挙には否定的だ。ゴンサレス氏と二人三脚で選挙戦を展開したマチャド元国会議員は15日、南米メディアとの記者会見で「既に選挙は終わった」と強調。その上で「日に日に(権力の座に)居座る代償が大きくなることをマドゥロ氏は理解すべきだ」と語った。

 ベネズエラ大統領選に対しては国連も「透明性が欠けていた」との見方を示している。13日には現地に派遣した専門家チームの中間報告書を公表し、選管が全体の得票率のみを公表してマドゥロ氏の勝利を発表したことは「現代の民主的な選挙では前例がないことだ」と指摘した。【ニューヨーク中村聡也】

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