米司法省は6日、米国の要人暗殺を計画したとして、イランと関係のあるパキスタン人のアシフ・マーチャント容疑者(46)をおとり捜査で逮捕したと発表した。米メディアによると、暗殺計画の対象には共和党大統領候補のトランプ前大統領も含まれていたという。
米捜査当局は、イランが米国での要人暗殺を狙っているとみる。トランプ政権時代の2020年に米軍がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したことへの報復との見方だ。
トランプ氏は今年7月、東部ペンシルベニア州で開いた選挙集会で演説中に銃撃されたが、捜査当局はこの事件とイランは無関係だとみている。
司法省によると、マーチャント容疑者は4月にパキスタンからトルコ経由で米国に入った。パキスタンの織物を米国内で販売したいと取引相手に共同ビジネスを持ちかけていたという。
その後、6月になると「他にもチャンスを提供できる」として、取引相手に、米国の政治家や政府当局者の暗殺▽抗議活動▽文書やUSBメモリーの窃取――といった計画を説明した。暗殺を実行する殺し屋を雇ったり、パキスタンからの送金を手伝ったりするよう求め、紹介された殺し屋には手付金として5000ドル(約72万円)を支払ったという。
ただ、この取引相手は暗殺への協力を持ちかけられた時点で捜査当局へ通報し、おとり捜査に協力。当局者が殺し屋になりすましていた。当局は7月、容疑者が出国しようとした際に逮捕した。要人暗殺は8~9月に実行する案もあったとされるが、米メディアによると、逮捕時点で具体的な計画は決まっていなかった。
米メディアによると、情報当局は7月のトランプ氏銃撃事件とは別に「イランがトランプ氏暗殺を計画している」との情報を得ており、大統領警護隊が警備を強化していた。
マーチャント容疑者はホテルで取引相手と話す際、録音を警戒して携帯電話を引き出しにしまわせていた。計画について電話で話す場合には、暗殺は「フリースジャケット」、送金は「デニムジャケット」、窃盗は「フランネルのシャツ」、抗議活動は「Tシャツ」と隠語を使うよう求めていたという。【ワシントン秋山信一】
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