7月28日の大統領選実施を発表するベネズエラの選挙管理当局幹部ら=3月、カラカス(AP=共同)

【ニューヨーク=平田雄介】バイデン米政権は18日、南米ベネズエラに対する経済制裁の緩和措置を終了した。同国の反米左派マドゥロ政権が7月28日に実施予定の大統領選に向けて野党を弾圧し、独裁体制の強化を図っていると判断。公正な選挙実施への圧力とするためだが、奏功するかは見通せない。

米国務省のミラー報道官は17日の声明で、マドゥロ政権が「野党の立候補者の登録を妨げ、多くの政治活動家を不正に拘束した」とし、ベネズエラの石油・ガス部門への制裁緩和を延長しないと発表した。

同国のマドゥロ大統領は反米左派チャベス大統領の後継として2013年に就任。17年には野党が多数派を占める国民議会の解散を目指すなどして独裁色を強め、当時のトランプ米政権は制裁を強化した。だが、マドゥロ氏は18年の前回大統領選でも野党候補の出馬を封じて再選され、今回3選を目指している。

バイデン政権も制裁を引き継ぎ、マドゥロ氏に民主的な選挙の実施を要求。昨年10月にはマドゥロ政権が24年中の大統領選実施や野党候補の安全の保証-などで野党側と合意したのを機に、石油・ガス部門への制裁を6カ月間停止した。

バイデン政権としてはこの際、ガソリン価格が高騰する中でベネズエラ産石油の供給を増やし、インフレを抑制する思惑があったとされる。米南部国境に押し寄せるベネズエラからの不法移民の強制送還実現のため、マドゥロ政権の協力を必要とする事情もあった。

ただ、マドゥロ政権の影響下にある最高裁判所は今年1月、野党統一候補のマリア・コリナ・マチャド氏が汚職に関与したとし、15年間の公職追放処分を決定した。マチャド氏の陣営幹部の拘束も相次いだ。

野党側は3月、マチャド氏の代理として大学教授のコリナ・ヨリス氏の擁立を決めたが、立候補登録をできなかった。選挙管理当局の妨害があったとされる。

ベネズエラが米国の意向を無視する背景には、中国やロシアの後ろ盾がある。米シンクタンク・大西洋評議会によると、ベネズエラ産石油の輸出先の9割近くは中国向けで、ベネズエラは武器購入などを通じてロシアとも深い関係にある。

一方、制裁の復活で米国はガソリン価格上昇やベネズエラからの不法移民増加のリスクを抱えた。いずれも11月の米大統領選の重要な争点で、再選を目指すバイデン大統領にとって重荷となる可能性がある。

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