世界最多の約14億人が暮らすインドで19日、下院(定数545議席)総選挙の投票が始まった。有権者数は約9億7000万人。投票は6月1日まで1カ月半かけて、地域ごとに7回に分けて行われる。各種世論調査では、3期目を目指すモディ首相率いる与党インド人民党(BJP)が大きくリードしている。
19日朝、北部ウッタルプラデシュ州サハランプルでは、投票を終えたことを示すインクを指先に付けた男女が、次々と投票所を後にした。全国で最も人口が多い州で、モディ氏の後継者候補の一人と目されるヨギ氏が州首相を務めるBJPの票田だ。主婦のレカ・サイニさん(39)は「強いリーダーであるモディ首相を誇りに思う。道路建設などのインフラ整備を続けてほしい」と語り、モディ政権の続投を期待した。
2019年の前回総選挙でBJPは、連合を組む政党と合わせて353議席を獲得。今回はさらに議席数を伸ばすとの予測もある。与党の優勢を支えているのが、モディ氏個人の人気だ。米調査会社モーニング・コンサルトの3月28日~4月3日の調査によると、モディ氏の支持率は75%で、25カ国中最も高かった。インドメディアはモディ氏を「世界で最も人気のある指導者」と形容する。
14年のモディ政権発足後、インドは国内総生産(GDP)で旧宗主国の英国を上回り、世界5位となった。モディ氏は「3期目の任期中に世界3位の経済規模になる」と訴える。
また外交面でも、ウクライナ侵攻により欧米諸国とロシアの分断が深まる中、双方との友好関係を維持。議長国を務めた昨年9月の主要20カ国(G20)首脳会議では、グローバルサウス(南半球を中心とする新興国、途上国)の代弁者として存在感を発揮した。
BJPは「モディ・キ・ギャランティー(モディの約束)」と題したモディ氏個人を前面に押し出したマニフェストを発表。高速鉄道網の拡充をはじめとするインフラ整備をさらに進めることなどを盛り込んだ。
一方、最大野党・国民会議派などの野党連合は失業問題や物価上昇への対策を訴えている。国際労働機関(ILO)によると、23年の大卒以上の失業率は28・4%に上る。この日、サハランプルで投票したサヒルさん(18)は「今回が初めての投票なのでワクワクしている。若者のための雇用が増えることを期待している」と語った。【サハランプル川上珠実】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。