子どもと一緒にポーズを取るバイデン米大統領(中央)=西部ネバダ州ラスベガスで2024年7月16日、ロイター

 11月の米大統領選に向けて、民主党内の混乱が続いている。共和党のトランプ前大統領(78)の銃撃事件以降、一時沈静化していたバイデン大統領(81)に公の場で撤退を求める動きが17日に再燃。8月19~22日の党全国大会前に大統領候補を正式指名する計画に反対する動きも出ている。挙党態勢を演出する共和党とは対照的に、足並みの乱れが鮮明になっている。

 「私は、バイデン氏がバトンを渡す時だと信じている。そうすれば、トランプ氏を打ち負かすことができる」。民主党の有力者のシフ下院議員(カリフォルニア州選出)は17日の声明でこう訴えた。シフ氏は同じくカリフォルニア州選出のペロシ元下院議長に近いとされる。ワシントン・ポスト紙によると、17日時点で民主党の連邦議員計23人が撤退を求めている。

 議員らがバイデン氏に撤退を求める理由の一つが、大統領選と同時に実施される上下両院の選挙だ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、シフ氏は16日の私的な会合で「バイデン氏が候補になれば、上院で負け、下院でも多数派を奪還するチャンスを失う」と危機感をあらわにした。

 一方、AP通信によると、民主党は8月第1週にオンラインで投票を実施して、バイデン氏を正式な候補に指名することを検討している。来週中にも最終決定する方針だという。

 通常は党大会で候補に指名するが、党は5月、党大会前に前倒しして指名の手続きを行う計画を公表。中西部オハイオ州が州法で候補指名の期限を8月7日と定めており、間に合わせるための措置だった。

 同州はその後、指名の期限を民主党大会後に変更。現状では党大会前に候補指名をしなければならない理由はなく、一部の議員からは「(撤退に関する)議論を封じ込める強引なやり方は受け入れられない」との声が上がっている。

 こうした中でも、バイデン氏は選挙戦を継続する姿勢を崩していない。16日には西部ネバダ州で演説し、トランプ氏の銃撃事件で使われた半自動小銃AR15の使用禁止を主張。「子どもを含む多くの命を奪ってきた。今こそ一掃する時だ」と訴えた。

 またワシントン・ポスト紙によると、バイデン氏は、連邦最高裁の改革案を検討している。終身制の判事に、任期を導入することなどが盛り込まれる見通し。現在は判事9人のうち6人を保守派が占める。州による人工妊娠中絶の禁止を容認する判決を出すなど保守的な判断が目立つほか、保守派の判事が共和党の大口献金者から接待を受けた疑惑も浮上している。

 バイデン氏は改革案を打ち出すことで、最高裁の現状を危惧する党内での求心力を取り戻すとともに、有権者の支持拡大につなげる狙いがあるとみられる。【ワシントン松井聡】

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