北朝鮮の元在キューバ大使館参事官、リ・イルギュ氏。2023年11月に韓国に亡命した=韓国で2024年7月14日(朝鮮日報提供)

 韓国大手紙「朝鮮日報」は17日、2023年11月に韓国に亡命した北朝鮮の元在キューバ大使館参事官、リ・イルギュ氏(52)へのインタビュー記事を報じた。リ氏は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記以外は、妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長も含め「(北朝鮮に住む)2500万人全員が奴隷に過ぎない」と述べた。

 北朝鮮では、韓国や米国を激しく批判する談話などを、国営メディアを通じて与正氏の名義で発表することが多い。リ氏は、与正氏名義の談話は、実際には金総書記が決めており、与正氏も決定前に内容を「見ることができない」と明言した。

金正恩朝鮮労働党総書記の妹、金与正党副部長=ベトナムのハノイで2019年3月2日、AP

 14日にも与正氏の名義で、韓国から飛ばされた北朝鮮批判のビラに対する報復措置を示唆する談話が発表された。北朝鮮はこれまでも報復として、ごみなどを入れた袋をつり下げた風船を韓国側に大量に飛ばしている。

 リ氏は「自分の名前が汚物風船などを正当化するのに使われ(与正氏も)気の毒だ。(与正氏の)力がどうであろうと(党内の地位が)2番目、3番目などというのは全部うそだ。『最高尊厳』(の正恩氏)以外はすべて奴隷に過ぎない」と述べた。

 また核・ミサイル開発について「金正恩政権は核・ミサイル開発に大金を使い、経済を荒廃させ、2500万の国民を現代版の奴隷に転落させた。高齢者は『日帝時代もこんなに大変ではなかった』と話していた。民心がすでに離れていることを政権もよく知っているので、恐怖政治の度合いを高めている」と指摘した。

 リ氏は、北朝鮮外交官の給与事情についても明らかにした。外務省副局長時代の月給は北朝鮮の通貨のウォンで約3000ウォンで、「当時(のレート)は1ドルが約8000ウォンだったので私の月給は0・3ドル(約50円)ほどだった」と述べた。

 海外勤務時はドルで給与を受け取るといい、在キューバ大使館参事官時代は月給500ドル(約7万9000円)だった。

 生活費にも事欠くため、外交官たちは海外で外交特権を悪用して違法に金を稼ぐほかないという。リ氏は、北朝鮮の在キューバ大使館職員たちがひそかに葉巻を中国に売る「商売」をして生計を立てていると明かした。【ソウル福岡静哉】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。