11月の米大統領選に向けて、共和党候補指名を確実にしているドナルド・トランプ前大統領(78)は15日、中西部オハイオ州選出のJ・D・バンス連邦上院議員(39)を副大統領候補に起用すると発表した。ラストベルト(さびついた工業地帯)の白人労働者の窮状を描いた回想録「ヒルビリー・エレジー」の著者として知られる若手のバンス氏を起用することで、トランプ氏は2016年大統領選での「白人労働者の熱狂」を再現したい考えだ。
民主党はジョー・バイデン大統領(81)とカマラ・ハリス副大統領(59)のコンビで臨む予定で、副大統領候補の討論会に向けた調整が今後進められるとみられる。2大政党の大統領候補がいずれも高齢のため、職務継続が難しくなった場合に地位を継承する副大統領候補の資質が従来以上に注目されている。
バンス氏は22年中間選挙で「トランプ派」の象徴的候補として注目され、初当選した。米国の製造業の復興、石油・天然ガス・石炭の掘削推進、国境管理強化など、主要政策はトランプ氏と同様だ。地元オハイオ州にはウクライナからの移民が多いが、「米国第一主義」を掲げ、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続に強硬に反対している。
バンス氏には、ラストベルトの一角である東部ペンシルベニア、中西部ミシガン、ウィスコンシンの支持拡大への期待もある。ただ、トランプ氏は元々、白人労働者から強い支持を受けている。女性や非白人の起用を見送ったことで、支持基盤の拡大にはつながらないとの見方もある。
一方、副大統領候補に起用されたことで、バンス氏は「トランプ氏の後継者」の最有力候補に躍り出た。憲法の規定で大統領は原則2期8年までとされ、トランプ氏が勝利しても次回の28年大統領選には立候補できない。若手で政策面も共通するバンス氏は、共和党の「ポスト・トランプ」レースで一歩先んじた形だ。
トランプ、バンス両氏は、7月15~18日に中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれる党全国大会で、正式に党の正副大統領候補に指名される見通しだ。【ワシントン秋山信一】
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