ハンガリーのオルバン首相による5日のロシア訪問に、欧州連合(EU)の他国から批判的な声が上がっている。ハンガリーは今月から欧州理事会の議長国を務めているが、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの融和的な姿勢が「EUを代表した」と受け取られる事態を危惧しているからだ。
オルバン氏は今月2日、ウクライナのキーウ(キエフ)を電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談したばかりだった。ロシアとウクライナを続けて訪れたのは、両国の紛争解決に向けた「平和のミッション」だと主張している。
ゼレンスキー氏との会談でオルバン氏は、まず一時的に停戦し、その後ロシアとの交渉に臨むように提案したが、国土の2割近くが占領されているウクライナには容認しがたい内容だった。
わずか3日後にはモスクワでロシアのプーチン大統領と会談に臨んだ。ウクライナ情勢が協議されて、プーチン氏は2022年に一方的に併合を宣言したウクライナ東部と南部4州からのウクライナ軍撤退など、ロシアが掲げる停戦条件を繰り返した。
オルバン氏は5日、「戦争中の両方の側と話ができる国が減っている」と述べ、両国への訪問は「平和のミッション」のためだと強調した。これに対し、ウクライナ外務省は同日発表した声明で「事前に相談がなかった」と指摘。「ウクライナに関することをウクライナ抜きで合意しない、という原則は破られてはならない」と批判した。
ハンガリーは今月1日から6カ月間、持ち回りで欧州理事会の議長国を務めているが、このことが事態を複雑にしている。オルバン氏は5日朝のラジオ番組で「誰の代表もしていない」と表明したが、プーチン氏は会談の冒頭で、オルバン氏を「古くからの友人」としてだけではなく「EUの代表」としても歓迎すると述べた。
EUのミシェル大統領はX(ツイッター)で「持ち回りの議長国にEUを代表してロシアと交渉する権限はない」と投稿し、オルバン氏の訪露はEUとは関係ないと強調した。エストニアのカラス首相もXで、オルバン氏が議長国という立場を「混乱を広めるために利用している」と非難した。
国内で強権統治を続けるオルバン氏は、これまでもロシアに融和的な立場を取ってきた。ウクライナ侵攻が始まった後も、ウクライナ支援に後ろ向きな姿勢を取るなど、EUの結束を揺るがすような言動を続けてきた。
AP通信によると、EU加盟国の首脳による訪露は、ロシアによるウクライナ侵攻開始から間もない22年4月に、オーストリアのネハンマー首相がプーチン氏と会談した以来となった。【ベルリン五十嵐朋子】
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