4日に投開票が行われたイギリス総選挙。スナク首相率いる保守党が大敗を喫し、スターマー党首(61)率いる労働党が圧勝しました。スターマー党首が新首相に就任し、14年ぶりの政権交代です。

スナク前首相
「国民の皆さんには、何よりもまず謝罪いたします。私は首相職に全力を傾けてきましたが、皆さんが明確な意思を示しました。“イギリス政府は変わらなければならない”と」

スターマー新首相
「国民は圧倒的多数をもって『変革と国家再生』『奉仕する政治への回帰』を決断しました。我々は皆さんの信頼を背負い、国を立て直していきます」

政権与党だった保守党。これまで負けたことがない選挙区でも落選が相次ぎました。前回総選挙では365議席を獲得していましたが、今回、121と過去最低まで激減。現役の閣僚や幹部、元首相までが落選するという歴史的な大惨敗となっています。

首相官邸の猫・ラリーにとって、6代目の首相を迎えることになります。ラリーにとって、保守党以外の首相と付き合うのは、初めてです。

新たに首相に就任したのは、労働党のキア・スターマー党首(61)です。1721年に初代首相が誕生してから、80代目となります。

スターマー新首相
「私が出たような労働者階級の家庭が生計を立てられる安心を与えたい 。『あなたの子どもにとって、イギリスはより良い国になるか』そう私がいま尋ねたら、皆さんの多くは『NO』と答えるでしょう。だからこそ、あなたが再び信じる日まで、私の政権は、毎日のよういに闘います」

スターマー氏は、労働者階級の家庭に生まれ、難病の母親と障害のある弟がいたことから、オックスフォード大の大学院で法律を学び、人権派弁護士として活躍します。その後、検察庁長官を務め、議会の不正経理問題で与野党の議員を起訴したことが評価され、爵位が与えられました。

政治家に転身後は、2020年に労働党党首となり、議会で時の首相を厳しく追及してきました。

ガーディアンの人物評は、このようなものです。
英・ガーディアン紙
「味気ないかもしれないが、スパイシーな政治に飽き飽きした国民の味覚テストには合格する。華やかさに欠けるところが、財産になりうる」

労働党の主な公約は、インフレ抑制、経済安定、密入国組織の取り締まり、医療制度と教育の拡充などです。

ウクライナ支援は、これまで通りとされています。ただ、小選挙区制のため、労働党の大勝となっていますが、得票率で見ると、さほど伸びているわけではありません。労働党が期待されているというよりかは、保守党が拒否されたというのが実情のようです。

ロンドン市民
「保守党もスナク氏も気に入らなかっただけ。みんな保守党に投票するのが嫌だった。労働党や自由民主党やリフォームUKに投票するしか選択肢がなかったと思う」

ロンドン市民
「全部、解決すると考えるのは甘いかもしれないが、スターマーと労働党が、政策を転換する覚悟があるのか様子を見る必要がある。保守党より誠意と指導力をもって臨んでくれると信じたい」


■醍醐穣ロンドン支局長に聞きます。

Q.スターマー党首は、華やかさに欠けるともいわれているそうですが、それでも労働党が圧勝した理由は何だったのでしょうか。

醍醐穣ロンドン支局長
有権者に話しを聞きますと、とにかく変化を望む声というのが多く聞かれました。しかし、労働党の政策に共鳴するという人は少なくて、保守党政権を倒すために、今回は労働党に投票したという人が大勢でした。それは、最新の世論調査にも表れていて、『労働党の政策を評価して投票した』と答えた人は、わずか5%にすぎませんでした。また、これまでずっと保守党に投票してきたという人に話を聞きますと「政権交代は必要なので、今回は労働党に投票した。保守党には下野して、もう一度出直して欲しい」と話していました。
新しいスターマー政権には、変化を望む国民の厳しい視線が注がれます。期待に応える成果を出さなければ、さらなる政治不信を招く恐れがあります。

Q.今後、スターマー政権はどのように歩んでいくのでしょうか。

醍醐穣ロンドン支局長
外交手腕は未知数だと噂されています。ウクライナ、中東問題については、大きな変化はないとみられています。また注目されるEUとの関係ですが、新政権で外相に就任する見通しのラミー氏は、離脱したEUへの再加盟はないとしながらも、関係はリセットする必要があると話しています。EU離脱で溝ができた貿易や安全保障での連携を模索する考えを示しています。また、日本との関係ですが、保守党政権下で、次期戦闘機の開発など、安全保障や経済の面で連携が進んでいます。これは新政権になっても継続される見通しです。中国との関係について、ある外交関係者に聞きますと、貿易など経済の面と安全保障の面でバランスをとりながら、より厳格に対応していくのではないかとみています。基本的外交方針は継続しつつ、より現実的な路線を目指していくとみられています。

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