11月の米大統領選に向けたテレビ討論会が目前に迫る中、8年前の大統領選でドナルド・トランプ前大統領に敗れた民主党のヒラリー・クリントン元国務長官は、トランプ氏を論破しようとするのは「時間の無駄」だと振り返った。米紙ニューヨーク・タイムズに25日寄稿した。
トランプ氏の主張は「ナンセンス」
「あの舞台に上がることの耐えがたい重圧、そしてトランプ氏が絡むと本質に集中することがほぼ不可能になる」
クリントン氏は寄稿で、ジョー・バイデン大統領とトランプ氏と直接対決した唯一の政治家としての立場から、今回の討論会の注目点を論じた。クリントン氏は2008年大統領選の民主党指名候補争いの際、当時上院議員だったバイデン氏とも討論会に臨んでいる。
トランプ氏をめぐり「彼の主張を見極めるのは不可能に近い。ナンセンスな話に始まり、べらべらと脱線する」と批判交じりに回想。人工妊娠中絶や富裕層への減税、気候変動問題などの争点において「正面からの答えを避け」、相手の話をさえぎることで優位に立とうとする狙いがあるとした。
バイデン氏の不利な点は
現職のバイデン氏については、大統領としての任務に追われるため討論会の準備に多くの時間を割けず「不利な状況からのスタートになる」と指摘。「歴史的に現職の最初の討論会のパフォーマンスは弱くなる」とも記した上で、「今回の選挙は、有罪判決を受けた復讐(ふくしゅう)に燃える犯罪者と、米国民のために結果を出す大統領との間で争われる。討論会で何が起ころうと、選択は簡単だ」と締めくくった。
寄稿を受けてトランプ陣営の広報担当者は政治メディア「ポリティコ」に、16年の選挙に敗れたクリントン氏の「負け惜しみ」だとコメント。さらにトランプ氏を全否定する「トランプ錯乱症」に陥っているとも非難した。
世論調査会社ピュー・リサーチ・センターの5月の好感度調査によると、バイデン氏とトランプ氏の「どちらも嫌い」と回答した有権者は25%に達し、その割合は過去10回の大統領選で最も高い。16年のトランプ氏とクリントン氏の顔合わせも当時は同じく「不人気対決」と呼ばれた。【ニューヨーク八田浩輔】
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