中国を訪問しているドイツのショルツ首相が16日、習近平国家主席と会談を行った。ドイツが去年7月に中国と距離をとる対中戦略を策定してから初めてとなる会談、どのような中身となったのだろうか。
■中国 ドイツと関係深めていく背景は?
習近平国家主席 この記事の写真 中国 習近平国家主席「人類社会は増大するリスクと課題に直面しています。これらの問題は主要国の協力なしには解決できません」 中国・ドイツ首脳会談
中国を訪問しているドイツのショルツ首相は16日、習主席と首脳会談を行った。
ドイツがGDPで日本を抜いて世界第3位になったことを踏まえ、習主席は「グローバルな視野を堅持し、協力を模索すべきだ」と呼び掛けた。
ショルツ首相ショルツ首相も「EUの重要な一員としてドイツはEUと中国の関係の健全な発展を促進するために積極的な役割を果たしたいと考えている」と述べた。
ただ、ドイツは去年7月、初の中国戦略を策定。過度な中国依存を減らす、脱リスク「デリスキング」を進めている。
習主席はこの戦略を念頭においてか、「中国とドイツの協力は『リスク』ではなく、未来を創造するチャンスである」と語った。
ユーロ圏主要4カ国の実質GDP成長率(去年)コロナ禍以降、ドイツは経済が低迷。去年の実質GDP成長率は、ユーロ圏主要4カ国の中では唯一のマイナス成長となった。
中国がドイツとの関係を深めていくその先に、一体何を見据えているのか。中国問題に詳しい東京大学大学院の阿古智子教授はこう分析する。
東京大学大学院 阿古智子教授 阿古教授「西側諸国が一体となって中国に対抗することを恐れている。(ドイツは)中国との経済関係が歴史的にも非常に強いところで、ドイツからすると中国の景気後退によって大きな打撃を受けている側面もある。中国経済を徐々に復興させ、ドイツ経済もいい方向に導きたい」
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■EV市場狙う中国 追加関税めぐりドイツ意識■EV市場狙う中国 追加関税めぐりドイツ意識
EVで欧州市場を狙う中国今回の首脳会談、中国の狙いには電気自動車(EV)のヨーロッパ市場の存在があるようだ。
ロイター通信によると、中国からEUに輸入される電気自動車はEU内で生産された車種よりも価格がおよそ20%低く、EU内でのシェアが拡大しているようだ。
そうした中国車をEUは警戒していて、去年9月、国家補助金の恩恵を受けている中国車に対する関税導入の是非について調査を開始した。
これに対して中国政府も去年12月、電気自動車などのメーカーに対し、海外の拠点で現地生産をするように指導を通知した。
これを受け、中国の自動車メーカーは通知が出た直後、ハンガリーにヨーロッパ初となる現地生産工場の建設を発表した。
追加関税を巡りドイツ意識このように対策を打っている中国政府だが、そのEUの姿勢の切り崩しにはドイツの存在が大きいようだ。
ドイツメディアによると、ドイツ自動車工業会のミュラー会長は「今の中国とのビジネスはドイツで多くの雇用を創出している」と話し、EUが調査している追加関税について反対の姿勢を示している。
中国情勢に詳しい東京大学大学院の阿古教授は「ドイツの大企業や企業団体の反対はEUの全体の法律や規制にも影響してくる。中国はそこを意識しているのでは」と分析していて、中国はEUの追加関税阻止ためにドイツの産業界を意識しているという。
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■欧州への外交攻勢の狙いは?■欧州への外交攻勢の狙いは?
欧州外交に力入れる中国一方で、中国はドイツだけではなく、今年に入ってヨーロッパの国々に外交攻勢を展開している。
1月には李強首相がスイスとアイルランドを訪問。2月は王毅外相がドイツ、フランス、スペインを訪問。先月はオランダのルッテ首相が訪中し、習主席と会談を行った。
今月に入っても1日にフランスと外相会談。王文濤商務相がフランス、イタリアなどを歴訪。そして今回、ドイツのショルツ首相との首脳会談があり、また近々、習主席がフランスを訪問し、マクロン大統領と首脳会談を予定しているという。
米大統領選が背景に?なぜ、中国がヨーロッパ外交に力を入れているのだろか。
阿古教授は「トランプ前大統領が再選すると米中の関係はより緊張していく。ヨーロッパ外交に力を入れ、西側諸国が一体化しないように牽制(けんせい)する狙いがある」と分析している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年4月17日放送分より)
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