ロシアのプーチン大統領は20日、ベトナムの首都ハノイで同国の最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長と会談した。2017年以来の訪問で、露大統領としては5回目。「全方位外交」を掲げるベトナムは、ロシアのウクライナ侵攻後も歴史的な友好関係を維持している。
ベトナムは12年に両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げした。日本や米国を含む計7カ国と同等の関係を結ぶが、中国やロシアとは他国に先がけて格上げしており、関係の深さがうかがえる。ベトナム戦争では北部の共産主義勢力が旧ソ連の支援を受けて米国に対抗した経緯があり、特に防衛分野でのつながりは強い。
親露路線はウクライナ侵攻後も変わらず、国連総会でのロシア非難決議の採択を棄権し、国連人権理事会の理事国資格を停止する決議に反対した。配慮の背景にあるのが、武器調達や、石油やガスなどエネルギー開発での協力関係だ。
ロシア依存の武器調達
ベトナムは長らく武器調達をロシアに依存し、ソ連時代から戦車や潜水艦など主要な装備を頼ってきた。西側諸国の対露制裁が強まる中、調達先を韓国などに広げる動きも見せているが容易ではない。南シナ海で中国と領有権問題を抱えることもあって装備の近代化は急務で、最大の供給元との関係悪化は避けたいのが実情だ。
一党体制を敷くベトナム共産党にとって中国は政治体制が近く、中国からの投資も経済成長には必要だが、過度な依存への警戒は強い。従来「竹外交」と呼ばれる柔軟さとバランスを重視した外交方針を掲げており、プーチン氏の訪問も大国間のバランスを取るしたたかな外交戦略の一環といえる。
23年には米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が相次いでハノイを訪れ、それぞれと関係強化で合意。いずれの側にも立たず、競争で生じる経済的な恩恵を漁夫の利として得ながら国益を最大限に守ってきた。ただ、米国はベトナムの親露姿勢に警戒を強めているとみられる。
東南アジア諸国連合(ASEAN)では、唯一シンガポールが対露制裁を実施。その他の国はロシアを積極的に非難するのを避け、中立的な立場を取る。【バンコク武内彩】
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