ロシアと北朝鮮が19日に「同盟」関係の復活とも言える包括的戦略パートナーシップ条約を結んだことは、両国と緊密な関係にある中国でも波紋を呼んだ。
中国外務省の林剣副報道局長は20日の定例記者会見で、新条約について「露朝の2国間協力の問題であり、論評しない」と述べるにとどめた。慎重な物言いからは自国の外交への影響を見極めている様子がうかがえる。
中国の外交政策に詳しい中国人民大の時殷弘教授は毎日新聞の取材に「露朝の“同盟”締結に対する中国政府の反応は今のところ抑制的だ」と分析する。「今回の条約と、日米韓の軍事協力の深化とが相まって、北東アジアや西太平洋、さらに欧州における(国家間の)対立や紛争が激化することは明らかだ」と警鐘を鳴らした上で、「中国側は北東アジアの安全保障環境の不安定化を望んでいない」との見方を示した。
時氏はさらに、朝鮮半島での軍事衝突の防止は「中国の重大な利益の一つ」と指摘。米欧や日本で「中露朝」の一体化への懸念が高まっていることに「中露朝は限界のあるまとまりであり、3カ国間の軍事同盟ではない」と反論した。
中国メディアの関連報道では、「西側諸国の圧力に対する露朝の反撃」との見方が目につく。
中国中央テレビの19日夜の報道番組で、呉大輝・清華大ロシア研究院副院長は「(米欧が)最も懸念する事態が起きた。露朝による事実上の同盟関係締結は、過去のソ連と北朝鮮の同盟より重大な影響を及ぼす可能性がある」と指摘。新条約は、ウクライナを侵攻するロシアへの北朝鮮の軍事支援を正当化する内容でもあり、「西側は驚き慌てているだろう」と話した。
一方、時事評論家の邱震海氏は18日に中国のネット交流サービス(SNS)へ投稿した論評で「北朝鮮がロシアから技術援助を得て核戦力を増強すれば、中国の国益にはマイナスになる」とし、露朝接近は中国に複雑な利害得失をもたらすと分析した。【北京・河津啓介】
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