南太平洋島しょ国のソロモン諸島で17日、総選挙(1院制・定数50)の投票が始まった。2019年に台湾と断交し、中国と国交を樹立したソガバレ首相が政権を維持できるかが最大の焦点。野党側は対中関係の見直しを訴えている。首相選出には数週間かかるとみられるが、地域内の地政学的対立が高まる中、結果の行方に注目が集まっている。
「中国との国交樹立はソロモン諸島を世界に知らしめた」。ソガバレ氏は3月、中部マライタ州での演説でそう述べ、自身の「功績」を強調した。さらに「中国政府の価値観を知れば、本当に驚くだろう。中国に物乞いはいない。世界一の経済を誇るはずの米国の主要都市にはどこにでもいる」と続け、「中国式の社会主義体制」を称賛した。
ソガバレ氏は19年の前回選挙で通算4度目の首相に就任し、中国との距離を急速に縮めた。
両国は22年、ソロモン諸島が社会秩序維持などの目的で中国に警察や軍の派遣を要請できる安全保障協定を締結。23年にソロモン諸島で実施された太平洋諸国の総合競技大会では、直接費用2億2000万ドル(約340億円)のうち、半分以上を中国が援助した。ソガバレ氏は「今後も中国との絆を強める」とする。
これに対し、野党は反発を強める。安保協定は全容が明らかにされていない上、警察当局の年次報告も18年以降、公表されていない。政権に批判的な人を国家組織から排除するなど、ソガバレ氏の強権的な振る舞いも目立つ。
野党連合のマシュー・ウェール代表は「他国の利益のために自国を売っている」と政権を批判。「首相になれば、ソガバレ氏とは全く違う形で中国と付き合う」と述べ、対中関係の見直しを示唆している。
今回の総選挙には334人が出馬。首相は選挙後に議員間の交渉で選出される。過去に単独過半数を得た政党はないが、オーストラリアやニュージーランドのメディアは、資金に余裕がある現職議員が多いソガバレ氏の与党が「わずかに優位」と報じている。開票作業は数日かかる見通し。
ソロモン諸島政治を研究する豪国立大開発政策センターのテレンス・ウッド研究員によると、有権者の多くは、政党ではなく、候補者個人が家族や地域に有益かどうかを重視する傾向がある。特定の政党から出馬した候補者が当選後すぐに離党するケースも多いという。ウッド氏は「最終的な結果は、選挙後の秘密裏による連立交渉の行方を注視する必要がある」と説明している。【バンコク石山絵歩】
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