トルコ沿岸を航行するリベリア船籍のタンカー=2019年12月15日、ロイター

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)が14日発表した首脳宣言には、ウクライナに侵攻するロシアから中国などに原油を運ぶ「影の船団」と呼ばれる闇タンカーの取り締まり強化が盛り込まれた。

 首脳宣言は、G7などによる制裁を回避する影の船団について「詐欺的な代替的輸送行為」だと非難した。こうした輸送に関与した者のほか、ロシア産原油に設けた上限価格違反や影の船団の利用によって利益を上げた団体や個人に対し、新たに制裁を科す。

 G7などは2022年12月、ロシア最大の収入源の一つである原油輸出を抑制するため、市場で取引する場合の上限価格を1バレル=60ドル(約9400円)とする追加制裁を導入した。上限価格を上回る取引には、海上保険などを引き受けないよう保険会社に義務付ける仕組みだ。

 だが、制裁は限定的な成果しかあげられていない。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシア産原油、石油製品などの輸出収入は23年の月平均で147億1000万ドル。世界的な原油高の恩恵を受けた22年の181億5000万ドルからは減少したが、高い水準にとどまっている。

 主な原因として挙げられるのが、廃船間際の老朽船を使う影の船団と呼ばれる闇タンカーによる輸送だ。

 闇タンカーは欧米の保険に加入せず、船籍を頻繁に変更するのが特徴で、ロシアとのつながりをたどりにくい。位置情報を隠し、タンカー同士が沖合で接近して原油を移し替えるなどするため事故も起きやすい。

 22年2月のロシアによるウクライナ侵攻直後から数が増え、現在は1400隻程度存在するとみられている。NGOなどが動きを追跡しており、インドや中国が受け入れ国だと特定されている。【バーリ(イタリア南部)宮川裕章】

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