国連のグテレス事務総長は、紛争下の子どもの権利保護に関する年次報告書で、パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエル軍を人権侵害を犯す主体のリストに加えた。イスラエルが7日、国連側から通知を受けたと明らかにした。イスラエルのエルダン国連大使は「事務総長こそブラックリストに入れるべきだ」と猛反発している。
報告書は、過去1年間に武力紛争下で暮らす世界の子どもの人権侵害事例を検証するもので、国際人権団体は「恥ずべきリスト」と呼ぶ。最新の報告書は今月14日に安全保障理事会に提出される予定で、違反行為の詳細については現時点で明らかにされていない。昨年の報告書はウクライナに侵攻しているロシア軍が初めて重大な人権侵害を犯す主体としてリストに加えられた。
ガザの保健省の発表によると、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まった昨年10月以降、ガザでは1万5500人以上の子どもが死亡したという。世界保健機関(WHO)は、ガザの5歳以下の子どもの85%が丸一日食事を取れないことがあるとした。
ロイター通信によると、イスラエルのカッツ外相は「イスラエルと国連の関係に影響を与えるだろう」と述べた。エルダン大使はX(ツイッター)で、国連側から通知を受けた場面を撮影した動画の一部を投稿。電話口で「我が軍は世界で最も道徳的な軍だ」と主張し、「事務総長の恥ずべき決定はハマスを利し、戦争と苦しみを長期化させるだけだ」などと批判の矛先をグテレス氏に向けた。
国連のデュジャリック報道官は、事前通知は加盟国への「礼儀」で情報の漏えいを防ぐための措置だと説明。動画を公開したエルダン大使の対応を「衝撃的で受け入れがたい。率直に言って、私がこの組織に勤めた24年間で見たことがないものだ」と不快感をあらわにした。【ニューヨーク八田浩輔】
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