各国に開設されている「孔子学院」。スウェーデンは全て閉鎖した=2021年、独北東部シュトラールズント

【ロンドン=黒瀬悦成】北欧スウェーデン当局は同国に住む57歳の中国人女性記者に対し、「国家安全保障に深刻な脅威を及ぼしている」として国外退去命令を出した。女性記者の弁護士が9日、ロイター通信に明らかにした。スウェーデンは、治安機関SAPOが今年2月に中国とロシア、イランを「最大の安全保障上の脅威」と指摘するなど、中国への強硬姿勢を年々鮮明にしている。

女性記者の罪状は明かされていないが、スウェーデンの公共放送によると、女性記者はウェブサイト上に記事を掲載し、ストックホルムの中国大使館から記事に絡んで報酬を受け取っていた。

女性記者はまた、スウェーデンを訪れた中国政府・企業の代表団の案内役を務め、スウェーデン政府高官らに引き合わせようとした。約20年前から同国に住み、現地の男性と結婚し、在留許可も得ていた。

スウェーデンは1950年、欧州の非共産国の中でいち早く中国と国交を結び、概して良好な関係を築いてきたが、習近平体制による権威主義的統治への批判を強めたことで関係が険悪化。中国の裁判所は2020年、中国生まれでスウェーデン国籍の作家、桂民海氏に対し、中国共産党批判の書籍を販売したとして懲役10年を言い渡した。

一方のスウェーデン政府は同年、国内8カ所にあった中国政府による中国語普及の国外拠点「孔子学院」を全て閉鎖したほか、複数の自治体が中国との姉妹都市交流を打ち切った。

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