【パリ=板東和正】欧州人権裁判所(フランス・ストラスブール)は9日、スイス政府の不十分な気候変動対策が人権侵害にあたるとする判決を下した。欧州メディアによると、欧州人権裁が政府の気候変動対策の責任を指摘する判断を示したのは初めて。
スイス政府は上訴できず判決に従う義務があるため、気候変動対策の強化を迫られそうだ。
会員2千人超の高齢女性の団体が、スイス政府が気候変動対策を十分にしなかったとして欧州人権裁に提訴。気候変動による熱波で健康や生活の質が損なわれ、死亡するリスクがあると主張していた。
スイスメディアなどによると、欧州人権裁はスイス政府が過去の温室効果ガス削減目標を達成していないなどとして「将来の世代がますます深刻な負担を負う可能性が高いことは明らかだ」と指摘した。十分な気候変動対策を講じなかったことにより、欧州人権条約が定める「私生活と家族生活の尊重を受ける権利」が侵されたと結論づけた。
ロイター通信によると、スイス政府の代表は「判決を分析し、スイスが今後どのような措置をとるか検討する」とした。今回の判決が適用されるのはスイス政府だけだが、欧州各国の気候変動対策にも影響を与えそうだ。人権侵害を基にした気候変動訴訟が欧州全体で増加する可能性もある。
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんは欧州人権裁の判決を称賛し、「これは始まりに過ぎない。私たちはもっと闘わなければならない」などと訴えた。
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