ブリュッセルの欧州委員会本部ビル=八田浩輔撮影

 欧州連合(EU)は9日、EU域内の風力発電計画に参加する中国の風力発電用タービン製造企業が、中国政府からの補助金を受け、欧州企業との公正な競争を阻害していないか調査を開始すると表明した。欧州委員会のベステアー上級副委員長が米プリンストン大での講演で明らかにした。

 ベステアー氏によると、EUはスペイン、ギリシャ、フランス、ルーマニア、ブルガリアの風力発電計画に参加する中国企業の補助金受給状況などを調査する。調査対象となる具体的な企業名は明かしていない。

 中国企業は世界の風力発電設備市場で急速にシェアを拡大しており、欧州企業は追い上げを受けている。欧州委の調査によると、中国企業製タービンは欧米企業より約2割安価で、欧州委は昨年10月、中国による不公正な貿易慣行がないか監視する方針を示していた。

 EUは中国企業の攻勢を受ける電気自動車(EV)についても昨年10月、同様の調査を始めている。欧州ではかつて、中国政府から多額の補助金を受けた中国企業がEU域内の太陽光パネル市場でシェアを拡大し、多くの欧州企業が倒産や撤退に追い込まれた経緯がある。

 ベステアー氏は「太陽光で起きたことが、EVや風力発電や重要な半導体で起きるのを看過できない」とし、「場当たり的な対応でなく、全力で欧州の利益を中国から守る」と語った。

 一方、ロイター通信によると、ブリュッセルに駐在する中国側利益代表は、EUの調査開始の動きについて「保護主義で透明性を欠き、極めて不満だ」と反発した。【ブリュッセル宮川裕章】

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