アメリカや中国など各国の国防トップらが集まる「アジア安全保障会議」が、間もなくシンガポールで開幕します。中国とフィリピンが領有権をめぐり争う南シナ海情勢も焦点ですが、現地では日に日に緊張が増しています。

今月15日、フィリピン・ルソン島の沖合に集まったおよそ100隻の漁船団。この漁船団を率いるフィリピンの市民団体は、自国の領有権を主張するため、南シナ海のスカボロー礁の周辺海域にブイを設置しました。

スカボロー礁はフィリピンの漁師にとって伝統的な漁場でしたが、2012年から中国が実効支配。ブイを設置したあと、漁師たちの近くには中国海警局の大型艦船が姿を見せ、監視を続けていました。

フィリピン人漁師
「スカボロー礁の近くまで行きたいのですが、中国船が行く手を阻んでいるので近づくことができません」

この海域では、フィリピン漁船を中国海警局の隊員が追いかけ、立ち去るよう求めるなどの行為が常態化しています。

それだけではありません。先月、JNNのカメラがとらえたのは、フィリピン当局の船に接近する中国の艦船。

中国海警局の無線
「貴船は中国の管轄海域に侵入した。直ちにこの海域から退去せよ」

中国海警局は、高圧の放水砲をフィリピン当局の船に向け、繰り返し発射。両国の船は度々接近し、3度も船体がぶつかりました。

中国側のこうした威圧的な行動により、フィリピン国民の対中感情は悪化し、今回、市民団体が“緊張の海域”で動くきっかけとなったのです。

一方、ブイが設置された2日後、フィリピンの中国大使館は、中国の管轄海域に違法に侵入した外国人を最長60日間拘束できるとする法令を中国政府が公布したと発表。

こうした強硬姿勢の背景にあるのは。

中国外務省 林剣 報道官
「アメリカ側はややもすれば『米比相互防衛条約』をもって脅し、公然とフィリピン側が中国の主権を侵犯することを後押ししている」

中国が神経を尖らすアメリカの存在。日本も加わって、フィリピンのマルコス政権をサポートする姿勢を強調しています。

アメリカ軍は現在、フィリピンとの協定に基づき、国内9か所の基地を使用することができますが、南シナ海での中国の動きににらみをきかせるだけでなく、台湾有事の際にフィリピンを前線基地にする狙いがあるとの見方もあります。

今夜開幕するアジア安全保障会議では、南シナ海や台湾問題をめぐり、各国が意見を交わす見通しですが、緊張緩和に向けた道筋は見出せるのでしょうか。

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