民主派に対する判決公判が行われる裁判所の周囲で警備に当たる警察官=香港で2024年5月30日、ロイター

 香港の高等法院(高裁)は30日、2020年の立法会(議会)選挙に向けて民主派が実施した予備選に絡み、国家安全維持法(国安法)の国家政権転覆共謀罪に問われた民主派14人に有罪判決を下した。この事件は、政治家や運動家など民主派の中心的な人物らを含む47人が起訴され、国安法違反に問われた最大規模の裁判とされる。

 高等法院は47人のうち罪を認めていなかった16人に判決を言い渡し、元立法会議員の梁国雄氏や民主派メディアの元記者らが有罪となった。国安法の定める最高刑は終身刑だが、量刑の言い渡しは未定。元区議ら2人は無罪になった。

 20年9月の予定だった立法会選挙では、民主派が候補者を絞り込む独自の予備選を7月に実施。「立法会で過半数を獲得し、政府提案の予算案を否決する」と訴えていた。

 裁判の中で検察は、47人が共謀して、否決権を乱用して政府機能をまひさせ、政府トップの行政長官を辞任に追い込もうとしたとしたことが国家政権転覆共謀罪にあたると主張。弁護側は民主的な選挙を通じて、改革を進めようとしたに過ぎないと反論していた。

 民主活動家の黄之鋒氏など、罪を認めていた31人には後日判決が言い渡される。国安法は原則として起訴後に被告を保釈することを認めておらず、香港メディアによると罪を認めた被告のうち28人が約1200日にわたり勾留されている。

民主派に対する判決公判が行われる裁判所の周囲で警備に当たる警察官=香港で2024年5月30日、ロイター

 裁判への注目度は高く、ロイター通信によると米欧各国の外交官が傍聴に訪れた。有罪判決を受けた14人には豪州の国籍も持つ民主活動家が含まれ、ペニー・ウォン豪外相は「香港当局が民主派や市民社会を抑圧するため、国安法を広く適用し続けることに強く抗議する」との声明を発表した。

 香港政府は20年の立法会選挙を新型コロナウイルス流行を理由に1年延期した。21年12月に行われた選挙では、親中派に極めて有利な選挙制度に変更され、事実上の「翼賛議会」となった。【台北・林哲平】

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