トランプ前米大統領(77)が「不倫関係」にあったとされる元ポルノ女優に支払った口止め料を巡る事件の初公判が15日、東部ニューヨーク州の裁判所で始まる。大統領経験者が刑事事件の被告として法廷に立つのは初めて。公判はほぼ連日行われ、6~8週間かかる見通し。有罪評決が出れば、バイデン大統領(81)と再対決する11月の大統領選の行方にも影響しそうだ。
起訴状などによると、トランプ氏は初当選した2016年大統領選の前に選挙に不利な情報を隠すため、性的関係を持ったと主張する元ポルノ女優に顧問弁護士を通じて13万ドル(約2000万円)の口止め料を支払った。その後、立て替えた弁護士に親族企業を通じて弁済した際、口止め料支払いの発覚を恐れて「弁護士費用」と偽り、会計処理した罪に問われている。
トランプ氏は昨年3月に起訴された。性的関係を持ったこと自体を否定しており、無罪を主張する。これに対し検察側は、ニューヨーク州法では業務記録の改ざんは禁錮1年未満の「軽犯罪」だが、他の犯罪を隠すために改ざんすれば最高で禁錮4年の「重罪」に当たると指摘。弁護士による口止め料の立て替えは、トランプ氏への違法献金に当たるとしている。
公判は12人の陪審員を選ぶ手続きから始まり、その後、冒頭陳述や証拠調べが行われる。検察、被告側の主張などを聞いた陪審員が有罪か無罪かを全員一致で決め、評決を下す。被告のトランプ氏は連日出廷することが求められている。
トランプ氏は捜査を指揮したブラッグ検事が民主党の公認候補として選挙で選ばれたことなどを念頭に「(バイデン政権による)魔女狩りだ」と訴えてきた。米メディアによると、12日には南部フロリダ州の私邸で報道陣に対し「私は絶対に証言する」と述べ、被告人質問での反論に意欲を示した。「事件性はない。それが真実だ」と述べ、改めて無罪を訴えた。
一方、トランプ氏には焦りの色も出ている。トランプ氏は今回を含めて四つの刑事事件で起訴されているが、大統領選で不利になるのを避けようと公判の先延ばしを図ってきた。他の三つの公判期日は決まっていないが、今回の事件では裁判所が3月末に期日を決定。トランプ氏は延期を再三求めたが、裁判所は棄却した。口止め料を立て替えた弁護士はトランプ氏に不利な証言をしており、検察側は立証に自信を見せている。
ロイター通信などが4月上旬に実施した世論調査によると、トランプ氏に重罪で有罪評決が出た場合、無党派層の60%、共和党支持者の24%が大統領選で「トランプ氏に投票しない」と回答している。今回の事件は大統領選までに公判が行われる唯一のケースになるとの見方もあり、展開次第では有権者の投票行動に影響を与える可能性がある。【ニューヨーク中村聡也】
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