台湾の新たな総統に頼清徳氏が就任しました。中国と距離を置く民進党の政権が初めて3期続きますが、就任の演説で頼新総統は中国との関係について「現状維持」を強調しています。
就任式に臨んだ頼清徳総統。隣にいるのは、同じ民進党の蔡英文前総統です。
中国と距離を置く民進党の総統が3期続くのは、これが初めてです。総統に就任を受けた演説では…
台湾 頼清徳 新総統
「私は中国に対し、台湾への威嚇をやめ、台湾と共に世界の責任を負い、台湾海峡や地域の平和と安定の維持に力を注ぎ、世界が戦争の恐怖から免れるのを確保するよう呼びかけたい」
中国に対して圧力をかけるのをやめるよう求めるとともに「卑下せず、おごらず、現状を維持する」と強調。「対話」の姿勢も示しています。
ただ、頼新総統は台南市長時代に「台湾は主権のある独立国家」などと発言していたことで知られ、10年前に市長として中国・上海を訪れた時も…
頼清徳 新総統(当時 台南市長)
「台湾社会は先に民進党があって、独立の主張があったのか、それとも先に台湾社会に独立の主張があったから民進党があったのか」
中国は依然、頼氏を「独立勢力」とみなしていて、「一つの中国」を認めない限り、これまで通り圧力をかけ続け、公式な窓口を通じての対話も応じないとみられます。
一方、この就任式に合わせ、東京にある中国大使館はメディアを招いた「座談会」を開催。呉江浩大使は冒頭、30人を超える日本の国会議員が就任式に参加したことについて、よく使うこんな表現でけん制。
中国 呉江浩 駐日大使
「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになるでしょう」
そして、新総統については…
中国 呉江浩 駐日大使
「(民進党は)頼清徳まで全員が正真正銘の台湾独立主義者」
一方、台南市長当時の頼氏に、何度も「独立派だ」と迫っていた元市議は現在、国会議員にあたる野党国民党の立法委員。頼氏の、今の対中政策について尋ねると…
国民党 謝龍介 立法委員
「『台湾独立』は若い頃の理想の類でしょう。(国際社会の)レッドラインを越えれば、台湾だけでなく、東アジアに災難を招くことが分かっているからです」
現地では就任式を控えるけさ6時までの24時間に、中国軍の軍用機と艦船が事実上の停戦ラインである台湾海峡の中間線付近で確認され、軍用機6機は中間線を越えました。
今後、軍事や経済面で圧力を緩める様子が見えない中国に対し、頼新総統はどのように向き合うのでしょうか。
注目された頼新総統の演説、前総統の路線を継承していますが、それでも距離感には違いがあったようです。現地から中継です。
頼清徳新総統は演説で、蔡英文前総統と同様に「現状維持」を強調しました。過去に独立に関する発言のあった頼新総統ですが、きょうの演説では「中華民国の存在事実を直視し、台湾人民の選択を尊重することを望む」と述べるにとどめています。
ただ、同じ「現状維持」の路線であっても、蔡英文前総統の就任演説に比べると、中国とより距離を置いていると感じる内容でした。
蔡前総統は8年前、1992年に中国と台湾の当局の担当者同士が「一つの中国」を認めたとされる「92年合意」について、「会談があったという歴史的事実は尊重する」と述べていました。
歩み寄りを見せた形でしたが、中国は「一つの中国」を認めていないとして、以後、対話に応じていません。
頼新総統も今回の演説で「92年合意」には触れず、「一つの中国」も認めていないことから、中国が態度を変えることはないものとみられます。
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