イランメディアは19日、イランのライシ大統領(63)を乗せたヘリコプターが同日、北西部・東アゼルバイジャン州の山岳地帯で悪天候のため「不時着」したと報じた。ヘリにはアブドラヒアン外相も同乗していた。現場付近では夜通し捜索が続いたが、20日未明の時点でヘリは見つかっておらず、墜落した可能性もある。ライシ師らの安否も分かっていない。
AP通信などによると、現場は首都テヘランから約600キロ離れたジョルファ付近とみられる。ライシ師は隣国アゼルバイジャンとの国境地帯でアゼルバイジャンのアリエフ大統領と共にダムの落成式に参加した後、州都タブリーズに戻る途中だった。ヘリは3機で飛行していたが、ライシ師らが乗ったヘリだけトラブルを起こしたという。
バヒディ内相は19日夕、「悪天候と霧のため強行着陸を余儀なくされた」と説明。マンスーリ副大統領は地元メディアに対し、ライシ師と同乗していた乗組員らと連絡が取れたと明らかにし、「事故は深刻ではなさそうだ」と語った。イラン革命防衛隊がヘリの位置を特定したとの報道も出ているが、夜間で霧が出ているため視界が悪く、捜索は難航している模様だ。トルコのアナトリア通信によると、トルコの無人機がライシ師が乗っていた可能性がある機体の残骸の熱源を確認した。イラン当局と情報を共有したという。現場付近は気温が下がっており、激しい雨も降ったという。
事故を受け、最高指導者ハメネイ師は19日、ライシ師の無事を祈るとともに、国民に対して「国家運営には混乱はない」と呼びかけた。また、直前までライシ師と会っていたアリエフ氏は「友好的な別れの後に不時着のニュースを聞き、心を痛めている」と語った。
ライシ師は保守強硬派の大統領として知られ、ハメネイ師の後継者とも目されている。2017年に大統領選に出馬したが、次点で落選。再出馬した21年の大統領選ではハメネイ師の後押しを受け、事実上の優遇措置を受けて当選を果たした。
就任後は反米・反イスラエルの姿勢を貫き、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスなどの親イラン武装組織を支援。4月には在シリアのイラン大使館空爆への報復として、イスラエルに対して300発以上のミサイルなどを発射した。【カイロ金子淳】
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