感謝状を贈られる百五銀行津駅西口支店の増田美香支店長(中央)と織田章子さん(右)=津市丸之内の津署で2024年4月24日午後1時31分、渋谷雅也撮影

 三重県警津署は4月下旬、特殊詐欺を未然に防いだとして銀行やコンビニエンスストア、家電量販店に相次いで感謝状を送った。手口が巧妙化し、被害件数も増えている中で、それぞれの「お手柄」が詐欺被害を防いでいる。

 百五銀行津駅西口支店(津市大谷町)に勤める織田章子さん(50)は3月25日午前11時ごろ、現金自動受払機(ATM)の操作に手間取る60代男性を見つけた。織田さんが声をかけると……

 「金に投資をするために、指定された口座に金を振り込みたい」

感謝状を受け取るヤマダデンキ津店の山下北斗副店長=津市藤方のヤマダデンキ津店で2024年4月25日午後1時31分、渋谷雅也撮影

 織田さんは詐欺を疑い、上司に相談。男性を説得して警察に通報した。「まさか私たちの支店に来るとは思わなかったけど、日ごろから(被害防止に)気をつけていたので食い止めることができて安心した」と話した。

 ヤマダデンキ津店(津市藤方)では3月18日午後2時ごろ、50代の男性がプリペイドカードの売り場を訪ねてきた。

 「海外の人に携帯電話で15万円分の電子マネーカードを購入するように言われた」

 不審に思った長尾章宏さん(38)は店を通じて通報した。同店が詐欺被害を食い止めたのは最近半年間で3件目。長尾さんは「買い方が慣れていないし、高額だから怪しかった。ニュースで見ていることが身近で起きているから気をつけないといけない」と意識の高さをうかがわせた。

感謝状を贈られたミニストップ芸濃椋本店の相沢順二店長=津市丸之内の津署で2024年4月25日午後2時32分、渋谷雅也撮影

 また、ミニストップ芸濃椋本店(津市芸濃椋本)では4月5日午後2時ごろ、4万円分の電子マネーカードを購入しようとした70代男性に店員が購入理由を尋ねた。

 「パソコンを直すために電子マネーカードを買ってくれるように言われた。電話の相手からコンビニでカードを買う時には、仕事で使うからと話すように言われている」

 店員から相談を受けた店長代理の相沢康裕さん(39)が警察に電話して未然に防いだ。

 津署によると、3月末の被害件数は▽特殊詐欺7件(被害額550万円)▽非対面で投資話を勧めて金銭をだまし取る投資詐欺7件(同9530万円)▽SNS(ネット共有サービス)でやり取りし恋愛感情などを抱かせるロマンス詐欺1件(同1600万円)――だった(いずれも暫定)。特殊詐欺の件数は前年同期と同じだったものの、被害額は150万円増えた。投資詐欺、ロマンス詐欺は前年同期は発生がなく、2023年夏から増加した。

 津署管内での「お手柄」3件はいずれも市民が機転を利かせたもの。柳生裕也署長は「警察だけで詐欺を防止することはできない。常日ごろ、情報収集して声掛けをしてもらえていることに感謝したい」と話した。

 一方、亀山署でも4月に感謝状を贈る事案があった。ローソン亀山東御幸店(亀山東御幸町)に同月9日午前11時ごろ、NTTの職員を装った男性と電話で話をしながら50代女性が来店し、ギフトカード30万円分を購入しようとした。

 「有料サイトの延滞金が発生しており、必要と言われた」

 店員の佐伯真実子さん(40)は相手に気付かれないよう、電話をつないだまま警察へ向かうよう女性にアドバイス。女性が警察に着いた時には電話は切れていたが、被害は防げた。

 家族や知人のふりをして現金を振り込ませる「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」などの多くは高齢者が狙われてきたが、最近では50代の被害者も増えているという。県警が「老後の資産形成を考え始める」と見る年代だ。有名な経営者や経済アナリストを装い、SNSを通じてもうけ話を持ちかけ、関心の高さにつけ込む手口が目立つ。

 県警は「携帯電話料金、有料サイトの利用料金、税金などが未納と言われた」「高額当選した、お金あげます等と連絡が来た」など詐欺の特徴的な言い回しを載せたカードを制作。23年4月から「声かけ支援シート」として県内のコンビニに配布している。被害に遭いそうな人に提示してもらうのが狙いだ。

 県警によると、23年の県内の特殊詐欺被害は274件、約7億円。ともに過去10年間で最悪だった。今年もロマンス詐欺が3月末までに24件(被害額約2億6000万円)で、投資詐欺は47件(同約4億6000万円)となっている。【渋谷雅也】

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