沖縄は15日、米国統治から日本に復帰して52年を迎えた。日米両政府は軍事行動を活発化させる中国を念頭に、南西諸島の防衛力を強化する方針で、沖縄での米軍の訓練は激しさを増し、自衛隊の増強も進む。岸田文雄政権は過重な基地負担の軽減を「政府の最重要課題の一つ」と位置付けるが、一連の「南西シフト」によって県民の負担感は逆に増している状況だ。
「わが国の安全保障環境が厳しくなり、基地の運用も激しくなっている。負担軽減の実感はなかなか感じられない」。多くの戦闘機などが配備されている米軍嘉手納基地を抱える沖縄県嘉手納町の当山宏町長は13日、記者団にそう語った。
嘉手納基地では2022年11月以降、F15戦闘機の段階的な退役に伴って騒音の大きいF35などのステルス戦闘機が巡回配備され、騒音被害が深刻になっている。23年11月には無人偵察機MQ9の部隊が鹿児島県から移駐。日米が原則、沖縄県・伊江島で実施することで合意しているはずの米軍パラシュート降下訓練も23年12月から毎月、嘉手納基地で実施され、県や周辺自治体が抗議している。
沖縄県内の米軍専用施設は1972年の復帰後、9440ヘクタールが日本側に返還されたが、現在も面積比で全国の7割が集中する。名護市辺野古の海では米軍普天間飛行場(宜野湾市)の県内移設に伴う埋め立て工事が進む。
24年3月には沖縄本島中部にあった米軍「ロウワー・プラザ住宅地区」(23ヘクタール)が今後の返還を見据え、日米共同使用の形で「緑地広場」として一般開放された。記念式典で林芳正官房長官は「負担軽減の目に見える成果の一つだ」と強調したが、後に続く基地返還の具体的な予定はしばらくない。
一方で、県内では自衛隊の新たな部隊配備が着々と進む。防衛省は23年3月、石垣島に陸自駐屯地を開設し、24年3月には本島中部・うるま市の陸自分屯地に地対艦ミサイル連隊を配備。日米は有事に備えた共同訓練も頻繁に実施する。玉城デニー知事は「自衛隊施設の設置は米軍の基地負担軽減と合わせて検討するべきだ」とくぎを刺す。
新型コロナウイルス禍で落ち込んだ県経済は回復傾向にある。23年度の観光客数は前年度比26%増の853万人で、過去最多の1000万人を記録した18年度比85%にまで回復した。有効求人倍率も23年度平均は1・17倍で、3年連続で上昇。ただ、1人当たり県民所得は全国平均の7割の水準にとどまり、急激な物価高や燃料価格の高騰が県民の生活に影響を与えている。【比嘉洋】
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