『ミッドライフ・クライシス』という、中年が直面する“心の不安”のことを表す言葉があります。中年の約8割が経験するとも言われています。
■ミドル世代に訪れる「第二の思春期」
番組でアンケートをとりました。全国の20代〜70代の男女304人に、「人生について、“理由のない焦り”や“落ち着かない感覚”がありますか」という質問です。
「ある」と答えた人は135人、「ない」と答えた人は169人でした。ただ、30代半ば〜50代を見ると、「ある」と答えた人が、「ない」と答えた人を上回りました。
全国20代〜70代の男女304人に番組が調査 この記事の写真は18枚 50代の会社員「同年代くらいの人が活躍しているのを見たりすると焦る。一応年齢を確認して、自分と比べてみたりする」 50代の専業主婦
「毎日家事をするだけの自分に、これでいいのだろうかと焦りを感じる」 50代の会社経営者
「キャリアの最後に、何かを成し遂げたいと焦っている」 「焦りを感じる」と答えた人の声 精神科医 熊代亨先生
「40代〜50代になってくると、社会的な立場も変わり、身体的に曲がり角を迎える。人生の残り時間も見えてくる中、焦りや不安、いら立ちなどが起こり、“ミッドライフ・クライシス(中年の危機)”と呼ばれる、メンタルヘルス上の課題がやってくる」 精神科医の熊代享氏
この『ミッドライフ・クライシス』とは、30代半ば〜50代のミドル世代に訪れる、通称『第二の思春期』。自ら築いてきたアイデンティティが崩壊し、精神的に不安定になることです。中高年の約8割が経験するとも言われています。
ミッドライフ・クライシスこうした例も、『ミッドライフ・クライシス』なのでしょうか?街の人に聞きました。
《事例1》50代の男性「ビジネスでは、若い頃は万能感もあったが、自分の実力や限界を知り、分をわきまえるように。以前よりも気力が衰えたと感じている」 50代男性の場合 《事例2》40代の男性
「若いころは音楽、読書、映画、旅行、ギャンブルと何にでものめりこんでいたが、今は何をやっても冷めてしまい、心から楽しめない。年々、趣味が減っていく」 40代男性の場合 《事例3》40代の男性
「学生時代からの友人の様子が変わった。毎年一緒に行っていた旅行を数年前から断るようになり、ご飯に誘っても、今は数回に一回しか来なくなった」 40代男性の場合 熊代先生
「3人の方、ミッドライフ・クライシスでうつ病などになりかけているように見える。生活がだんだん新しい年代に合わなくなり、趣味も若い頃ほど楽しめないことが続いていくと、中年になったけれど、それについていけない自分があり、人生のコーナリングがうまくいかない。これがゆくゆく本格的なメンタルヘルスの危機につながっていく。その前段階に3人の方はいるのではないかという心配がある。多くの方は、乗り越えて、楽しいことを見つけるが、一部の方は、人生のコーナリングがうまくできず、メンタルヘルスの問題になってしまう」
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■中年期を襲う様々な要因■中年期を襲う様々な要因
ミッドライフ・クライシスに陥る要因3つです。
(1)『健康』
体力の衰え、ホルモンバランスの乱れ、睡眠の質や食欲の低下などが表れます。
(2)『キャリア』
仕事の限界が見える中で、定年まで続けるのか、転職するのかの葛藤です。※キャリアがないなどの悩みもあります。
(3)『家庭環境』
親の介護、夫婦関係の悪化、子どもの自立による空虚感などです。
※独身であることでの将来の不安、身の回りで亡くなる人が増えて落ち込むなどもあります。
「ミッドライフ・クライシスには、中年期に起こる様々な、身体的・社会的・心理的変化が複合的に影響。変化に対応したライフコースにうまく移ることができないと、精神的に不安定になる」
■“不安感”からうつ病になったケースも
実際にミッドライフ・クライシスを経験した、Aさん56歳のケースです。
妻と2人の娘の4人暮らし。自動車ディーラーで、販売営業をしていました。40代半ばから、「いつまで仕事で成績を出し続けられるのか…」と不安感が増してきたということです。
Aさん56歳のケース当時の状況について、Aさんは、「ずっと仕事一辺倒で、仕事以外のつながりがない状態。不安感を抱えながら過ごしていたが、それなりに成績も良く、店長の代理を任されるように。しかし、自分の数字を伸ばしつつ、部下も育てていかないといけないという状況になり、自分のパフォーマンスが落ちていく感覚があった」といいます。
当時の状況についてそして、5年前、51歳の時に事態が悪化します。「休みの日ぐらいは、気分転換したいので旅行に行く。するとその旅行先で、携帯電話に上司から電話があって、1時間くらいずっと怒られ続ける。最終的にはうつ病になった」ということです。
その結果、人前に出られなくなり、立ち上がることすらままならない状態になり、約1年半休職し、療養しました。
5年前に事態が悪化主にうつ病などの気分障害の患者数です。
2011年は約96万人。そのうち40代〜50代は全体の36%。これが、2020年には約172万人で、そのうち40代〜50代は全体の43%。この10年で、40代〜50代の増加が顕著です。
気分障害(主にうつ病)の患者数 熊代先生「ミッドライフ・クライシスをうまく乗り越えられずに、うつ病になるという人の割合はとても多い。ミッドライフ・クライシスは、さまざまな精神疾患のきっかけになりやすい」 熊代先生
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■症状チェックリスト 特に気を付けるべき項目は?■症状チェックリスト 特に気を付けるべき項目は?
『ミッドライフ・クライシス』と、どう向き合えばいいのでしょうか?
精神科医の熊代先生作成のチェックリストです。8項目のうち、4つ以上当てはまったら、ミッドライフ・クライシスの可能性があるということです。
ミッドライフ・クライシス チェックリストどの項目も重めですが、『決断するなら今しかない』と、『相談相手がいない』は特に気を付けた方が良いそうです。今しかないと思い詰めていると、危険な選択肢にとんでいってしまうかもしれないし、相談相手がいないと止めてくれる人がいないためです。
熊代先生「ミッドライフ・クライシスだとしても、今後が心配になったからといって、突然仕事を辞めたり、リスクの高い投資を始めたり、行き当たりばったりの行動は危険。若い頃に比べ身体もメンタルも強くないので、無理せず、社会的立場や心身の変化を5年後、10年後に受け入れられるよう、下準備する意識で行動していくことが大切」 ミッドライフ・クライシスだとしても…
■陥らない・乗り越えるための対策は
ミッドライフ・クライシスをうまく乗り越えるための対策2つです。
(1)『適度な運動』
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンやエンドルフィンが分泌されます。
(2)『やりたいことをリストアップ』
今後やってみたいことや、興味があることを紙に書き出すなどして、優先順位づけして整理します。
「ミッドライフ・クライシスに陥らないためは、『年をとればとったなりに生きていける』と割り切って、あまり深刻に考えすぎないように。また、家族・職場・趣味の人間関係など、相談できる場を持っておけるといい」
「うつ病かもしれないと感じたときは、うつ病の症状は自分で判別するのが難しいため、少しでも不調を感じたら、ためらわず、早めに精神科・心療内科を受診してほしい」 ミッドライフ・クライシスに陥らないためには
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月9日放送分より)
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