凶悪事件の発生直後に逃走中の犯人を検挙するため、直ちに警察官による検問や張り込みを広範囲に展開する「緊急配備」(通称キンパイ)。都市交通網が発達した神奈川県では、早期の事件解決や被害拡大防止の大きな鍵を握る。鶴見署管内を主な舞台に繰り広げられた県警本部と同署、山手、横浜水上の3署による合同「キンパイ」訓練を8日夜、取材した。
訓練は午後8時から鶴見区の環状2号線でひき逃げ事件が発生したとの想定で実施された。雨で濡れた路面に、被害者役の男性が横向きに倒れていた。傍らには自転車が転がり、血のりで再現した血だまりが広がる。
事件の目撃者から110番通報を受けた交番勤務の警察官が現場に急行した。現場の状況からひき逃げ事件と判断して無線で鶴見署に報告。通信指令課が最初の緊急配備を同署に発令した。
「事故現場」から訓練を見守った鶴見署の本多啓之地域担当次長は「時間との闘いだ。経過と共に検挙はどんどん困難になる」と説明する。
本多次長によると、直ちに署員らは幹線道路など所定の場所で検問を開始した。防犯カメラの映像から逃走車の特徴を分析。首都高の料金所入り口(鶴見区)でフロントガラスが割れた不審な車の目撃情報が寄せられ、高速隊と自動車警ら隊も緊急配備に加わった。
防犯カメラの映像から逃走車のナンバーを特定。首都高の横浜ベイブリッジを南下する車が発見され、近隣の山手署と横浜水上署も緊急配備に参加した。一般道に戻ったところで車は検問で止められて訓練は終了した。
本多次長は「凶悪事件の広域化が進んでいる。迅速な情報共有を徹底し、的確な初動捜査を追及するために訓練が欠かせない」と意義を語った。【矢野大輝】
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