舞台公演を通じて「平和の種をまこう」と集まったダンサーや演出家らによるプロジェクト「A WiSP(ウィスプ)」が、5月に開催する念願の広島公演に向けて稽古(けいこ)に励んでいる。プロジェクトの代表は、関西を拠点にバレエ教室を営みながら平和運動を続けてきた小谷ちず子さん(70)。戦禍のやまない世界を憂えながらも「舞台人として一人一人ができることをやるしかない」と力を込める。
プロジェクト名は、「供に平和の種となろう」の思いを込めた「Along With Seeds for Peace」の頭文字から付けた。クラウドファンディング(CF)を通じて仲間と資金を集め、ダンサーや演出家、パントマイムのパフォーマー、音楽家、画家ら趣旨に共鳴したアーティストが参加する。
2023年9月に大阪府門真市で初めての公演を開き、今年1月には東京公演を実現させた。5月25日に広島市で3回目の公演を企画している。
小谷さんは兵庫県西宮市のバレエ教室「スタジオダンスコアポシブル」を主宰する。広島県出身で、両親は原爆を体験した。クラシックバレエからコンテンポラリーダンスまで手がける一方、市民団体「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」の活動にも参加し、平和をテーマにした作品も多数上演してきた。戦争で苦しむ人たちの悲憤や再生への希望を身体表現で演じる。
「さまざまな分野のアーティストと一緒に、舞台から平和を訴える活動を広げたい」と新プロジェクトを始動したのは22年夏。大阪と東京に続く上演となる広島は、これまでも小谷さんがこだわってきた地だ。自身のルーツでもあり、被爆地での公演は「一人の舞台人として平和のために何ができるか」を確認させられる。
「出演者も観客も平和の種に」と臨む広島公演のタイトルは「チェルノブイリの祈り」で、ベラルーシのノーベル文学賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の代表作から取った。同作収録の1編を基に朗読とダンスを組み合わせた作品や、広島原爆を題材にしたダンス作品などを披露する。
公演は広島市中区のJMSアステールプラザで5月25日午後2時と同6時の2回。当日券3000円、前売り券2500円、2回券4000円。問い合わせは同プロジェクト(090・5647・0751)。【宇城昇】
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