アルミ素材のドローンステーション。ドローンがテーブルに着地して荷物を下ろす状況を説明する関係者=北海道上士幌町で2024年4月12日、鈴木斉撮影

 公共交通機関が乏しい農村地域でドローン(小型無人機)を使った物資輸送に取り組む北海道上士幌町で12日、配送された荷物を収納・保管する「ドローンステーション」の実証実験が始まった。農作業で留守がちな住民が多いが、民家が点在するため、再配達もままならない一帯。「ドローン版宅配ボックス」として実用化の期待が高まる。【鈴木斉】

 ドローンが配送した荷物の一時保管に特化したステーションはアルミ素材を使用し、軽量で風雨に強いのが特徴。かまぼこ型のカバーで覆われ、遠隔操作で開閉する。内部にドローンが着地できる平らなテーブル(約1メートル四方)があり、荷物を置くことができる。

カバーが閉じた状態のドローンステーション=北海道上士幌町で2024年4月12日、鈴木斉撮影

 大きさは幅1・42メートル、奥行き1・02メートル、高さ80センチ(カバーが閉まった状態は1・2メートル)で、重量は約80キロ。利用者が荷物を取り出す際は本体の開閉スイッチを押す。ステーションを開発した「HORIZON」(東京都)の丸山勇雄社長は「保管機能を重視したシンプルな設計」と説明する。

 上士幌町は農村地域に住む高齢者ら「買い物弱者」を支援しようと、2021年から本格的にドローンを用いた宅配サービスの拡充に取り組んできた。すでに、地上補助者などが必要な「レベル3」の飛行要件で、新聞や弁当などの配送が行われている。ほかに、酪農家に冷凍保存した受精卵を直送したり、キャンプ用食材をグランピングやトレーラーハウスなどの宿泊場所に届けたりする実証実験も進めており、ドローンを積極的に活用する自治体として知られている。

 国土交通省は23年12月、レベル3の飛行要件を緩和。過疎地の上空で、操縦者の目視外でもドローンを飛ばせる「レベル3・5」を承認した。上士幌町は早速、国内で初めて3・5レベルの配送のデモ飛行を実施。今回の「宅配ボックス方式」はステーションの周囲に地上補助者を配置せず、遠隔操作で作業するレベル3・5に対応した取り組みになる。

 12日にあった報道陣向けの説明会で、上士幌町デジタル推進課の梶達課長は「農村部は家と家が離れているため、荷物の再配達が難しい。今回の試みで、利用者が荷物の到着を現場で待つ必要がない『置き配』がドローンでも可能になる」と期待した。

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