母校での思い出を語る水上恒司さん=長崎県諫早市で2024年5月2日午後2時5分、川島一起撮影

 NHK連続テレビ小説「ブギウギ」でヒロインの夫村山愛助を演じた俳優の水上恒司(こうし)さん(24)が2日、母校である長崎県諫早市の創成館高校でトークショーに出演した。生徒ら約800人を前に、野球部で甲子園を目指し、役者として一歩を踏み出した高校時代の思い出を語った。

 水上さんは福岡県出身。中学時代、夏の全国高校野球選手権長崎大会での創成館の全校応援を見て「かっこいい。この応援を受けながらプレーしたい」と思い、2015年に入学した。

 「小中学校の時は身長もあったので、ある程度努力をすればチームで一番になれた。各チームのエースや4番打者が集まる創成館に入り、上には上がいると実感した」。講演では高校時代を過ごした「若竹寮」を「若竹プリンスホテル」と呼び、生徒を笑わせた。

 高校では売店でパンを買うのが楽しみだった。好きな授業は古典。「物語のキャラクターの心情を問われた時、勉強しなくても『こんな感じじゃないですか』と答えたのが結構当たっていた。その時から本を読む力みたいなのはあったのかと思う」。

 野球部でのポジションは捕手。3年生では副主将を務めたが、最後の夏の県大会は準々決勝で波佐見に4―5で敗れ、甲子園の夢には届かなかった。

 「試合後、両親の顔見て、お金も出してもらい野球だけに集中させてもらったのに結果を残せずに申し訳ないと、子供ながらにすごく感じた」

 野球部を引退後、演劇部の顧問に勧誘されて同部に入った。

 「演劇部には1、2年生しかいなかった。そこにいきなり体格のいい真っ黒に焼けた3年生が『うーす』と入ってくるもんだから、(他の部員は)相当よそよそしかった。ちょっと怖そうにしていた」

 演じたのは、顧問が原爆をテーマに脚本を書いた「髪を梳(と)かす八月」。九州高校演劇研究大会で最優秀賞に選ばれた。緊張でセリフに詰まることが多く、「カミカミ恒司」と呼ばれた。

 役者を目指すと報告した時、野球部の稙田(わさだ)龍生監督からは「人生に正解というものはないから、自分が選んだものを正解にしていくしかない」と言われた。今も「その通りだ」と感じている。

 18年春の卒業式では答辞を読んだ。半年後にはTBSのドラマ「中学聖日記」に出演。その後、多くのテレビドラマや映画で活躍した。23年12月公開の映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」では特攻隊員を演じ、第47回日本アカデミー賞主演男優賞の優秀賞を受けた。

 講演では、後輩たちに「挫折した野球を通して得た経験が、役者をやっていて生きている。皆さんも悩みながら生きていると思うが、絶対に無駄なことはない」とエールを送った。

 自身については「役者にとって一番大事なのは、どれだけ志を持って必死に生きているか。自分は人間力で、芸能界の中で戦っていると思う。『いつ足元をすくわれるか』『いつ芸能界を辞めても生きていけるように』という危機感を持って暮らしている」と語った。【川島一起】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。