ハラスメント調査の報告書を甲賀広域行政組合管理者の生田邦夫・滋賀県湖南市長(左)に手渡す第三者委員会の新川達郎委員長=滋賀県甲賀市水口町水口の同組合消防本部で2023年12月26日午前11時5分、村瀬優子撮影

 新型コロナウイルスのワクチン未接種者らへのハラスメントが問題視された甲賀広域行政組合消防本部(滋賀県甲賀市)で、再発防止のために実施された職員研修の業務を、第三者委にハラスメント行為を認定された幹部職員が担当していたことが毎日新聞の取材で分かった。他の職員からは、本部の対応に疑問の声が上がっている。

 同本部では2021年、ワクチン未接種の女性職員が感染防止の名目で廊下脇で勤務させられ、退職した。問題を受けて設置された第三者委は、全職員らを対象に本部内でのハラスメントについて調査し、24年3月に報告書をまとめた。3分の1に当たる68人から被害の訴えがあり、消防長ら幹部3人について、暴言や暴力などのハラスメント行為を認定した。

 本部によると、研修は4月23、24両日、全職員を対象に実施。「事案の発生を真摯(しんし)に受け止め、職員一人ひとりの意識改革を図る」ことを狙った。4月に滋賀県湖南市から赴任した危機管理課長が講師となり、職員の使命や責務について話した。今後も月1回、こうした場を設けるという。

 本部が職員に通知した研修開催の文書には、ハラスメント行為を認定された幹部の1人が担当者として記されていた。

 第三者委の報告書によると、この幹部は夜間や休日にも提出書類のやり直しを部下に指示したなどとして、10人から17件の被害申告があった。幹部はハラスメント行為を全面的に否定。第三者委は「現況での消防勤務は困難な人材と判断せざるを得ない。適切な研修や最適な人事異動など、適正な処分を求める」としていた。

 組合は3月末、幹部3人のうち消防長と消防次長の懲戒処分を発表した。組合によると、管理監督責任の重い幹部2人の審査を急ぎ、残る1人については6月ごろまでに処分するかどうかの結論を出す予定。この幹部が研修を担当した。

 本部総務課は毎日新聞の取材に「この幹部はまだ組合の懲戒審査委員会で審査中で、昨年度と同じ所属になっている。処分がされれば不適切な配置だろうが、現在の段階で研修の担当から外すのは役職的に不自然だ」と話した。

 ある職員は「第三者委に加害者だと認定された職員を、ハラスメント事案を受けた研修の担当にするのは、被害者側への配慮にも欠けている。対応が遅く、組織の駄目なところが如実に出ている」と憤った。【村瀬優子】

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