ともに原爆投下後に飛散した放射性降下物による健康影響が否定できないと主張する長崎の被爆体験者、広島の黒い雨体験者の救済について考えるシンポジウムが12日、長崎市興善町の市立図書館である。両者は長年救済の枠外に置かれた点で共通するが、関係者が一堂に会して議論する機会は乏しかった。長崎、広島で声を上げる当事者や支援する弁護士、有識者たちが両被爆地に集まり解決への道筋を探る。【尾形有菜、樋口岳大】
広島の黒い雨を巡り長年、国は爆心地から北西方向に南北19キロ、東西11キロの細長い範囲だけを援護区域に指定していた。しかし、区域外で黒い雨に遭った人が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟で、2021年の広島高裁判決は、爆心地から約30キロ離れた場所にいた原告らも放射性微粒子を体内に取り込み内部被ばくで健康被害を受けた可能性が否定できないと認定。広島市と広島県に被爆者手帳の交付を命じた。
国側は上告を断念して新基準を作り、高裁判決で認められた広範囲の二つの雨域で黒い雨に遭った人らへの手帳交付を始めたが、長崎原爆の爆心地から12キロ以内で放射性物質を含む雨や灰などで健康影響を受けた可能性が否定できないと訴える被爆体験者は除外。被爆体験者44人が被爆者手帳の交付を求めた訴訟の判決が9月9日に長崎地裁で言い渡される。
広島でも、高裁判決で認められた雨域から外れているなどとして手帳申請を却下された人たちが新たな訴訟を起こしている。
シンポでは、長崎の被爆体験者、広島の黒い雨体験者や各訴訟の原告側弁護士、有識者、ジャーナリストらが問題の共通点や解決策について報告、議論をする。主催する世話人代表の田村和之・広島大名誉教授は「広島、長崎の両者で理解を深めないと解決に向けて前進しない」と指摘し、本田孝也・長崎県保険医協会会長は「これまで広島と長崎が交流する機会があまりなかった。救済に向けて連携を深める契機にしたい」と話す。
午後1時半~5時。資料代500円。問い合わせは県保険医協会(095・825・3829)。26日には広島市中区の広島弁護士会館でも開く。
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