2025年の大阪・関西万博は、13日で開幕まで1年になった。2度にわたる会場建設費の増額や海外パビリオン建設の遅れに厳しい視線が注がれ、今も開催そのものへの賛否が割れている。万博の意義や開幕に向けた現在の準備状況について、キーマンたちはどう見ているのか。日本国際博覧会協会の副会長も兼ねる吉村洋文・大阪府知事に聞いた。
キーマン・インタビュー
事務方トップ、参加国は「同じ船の仲間」
関経連会長どう見る?「情報発信を……」
連載「夢洲の現在」上 万博アクセスに「黄信号」
写真特集・大屋根「リング」などの建設が進む万博会場
違う価値観を持つ国々が最新の技術を持ち寄り、未来社会の羅針盤をつくる。社会課題の解決を目指す万博の大きな意義はここにあります。会場の準備は着実に進み、来年4月13日に支障なく開幕できます。
「課題乗り越えることが必要」
万博の課題が大きく報道されるのは当然だと思いますが、それを乗り越えていくことが必要です。中でもコストは厳格に管理していかなければなりません。
会場建設費は国と大阪府・市、経済界が等しく負担する仕組みで、3分の2は税が入ります。2度の増額を経て最大2350億円になりましたが、さらなる人件費や資材費の高騰も想定して予算を出したので、その範囲内でしっかりとやり遂げたいと思います。日本国際博覧会協会が財源を確保する運営費についても、しっかりと管理する仕組みが必要です。協会の予算の執行状況を第三者的な目でチェックする組織として、予算執行監視委員会が立ち上がりました。
開幕までいよいよ1年です。秋にはパビリオンの目玉の展示が具体化し、観覧予約も可能になる。個性豊かなパビリオンが建ち、国民の実感がわけば期待感につながっていく。万博の意義や中身を具体的に、より積極的に発信していきたいと思います。
日本で開催する以上、日本の未来や経済成長に資する万博にしたいと考えています。
大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)が会場となる今回は世界初の「海上万博」です。水素を使って動く水素燃料電池船の運航は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現する社会につながるかもしれません。「空飛ぶクルマ」の商用運航は僕も含めてチャレンジしています。まるで自転車や車に乗るように空を移動する時代が来るはずです。
「リング保存論、必ず出る」
1970年大阪万博でも「ワイヤレステレホン」の展示が携帯電話につながり、25年後のインターネット社会を経て情報革命が起きました。今回出展する大阪ヘルスケアパビリオンも、2050年の未来を見越した展示を予定しています。
動物の筋肉や脂肪の細胞を培養して増やし、3Dプリンターで成形してつくる「培養肉」の展示もその一つです。できれば、みなさんに食べてもらいたいですね。これらの技術をつなげていけば、食料危機問題も乗り越えることができる可能性だってあります。
未来社会を描くレガシー(遺産)を大切にしたい。木造リング(大屋根)も、万博後に残すべきだとの意見は必ず出てくると思っています。日本の技術が詰まった世界最大級の木造建築物は芸術性が高く、多くの人々を魅了するはずです。
万博は夢洲の会場だけでするものではありません。
「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマに関連したイベントが、開催期間中に各地で開かれることも期待しています。約2800万人の来場が見込まれる中、各地の魅力を発信する絶好のチャンスです。万博の効果を夢洲から関西一円に、もっといえば日本全体に広げるべきだと思います。【聞き手・井上元宏】
◇大阪・関西万博の概要
・開催期間 2025年4月13日~10月13日(184日間)
・会場 大阪市此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」
・テーマ いのち輝く未来社会のデザイン
・公式キャラクター ミャクミャク
・参加表明国 161カ国・地域(24年3月14日現在)
・想定入場者数 2820万人
・入場料(大人) 1日券7500円(前売りの「超早割」は6000円)
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