岸田文雄首相の近くに爆発物が投げつけられ、混乱する演説会場=和歌山市で2023年4月15日午前11時27分、山口智撮影

 和歌山市の漁港で1年前、岸田文雄首相にパイプ爆弾が投げつけられた事件で、無職の木村隆二被告(25)=殺人未遂などの罪で起訴=が、銃の製造方法をインターネット上で調べていたことが捜査関係者への取材で明らかになった。後に爆弾に関する検索が目立つようになったことも判明。捜査当局は銃よりも製造が容易な爆弾に絞り込んだとみている。

 事件は15日で丸1年となる。木村被告は2023年4月15日午前、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港で、衆院和歌山1区補選の応援演説に訪れた岸田首相のそばに筒状の爆弾1本を投げつけ、爆発させた疑いが持たれている。首相は無事で、警察官と聴衆の計2人が軽傷を負った。

木村隆二被告の動き

 捜査関係者によると、事件後の捜査で木村被告の通信履歴を解析した結果、「銃 作り方」などと入力していたことが明らかになった。時間を追うごとに銃から爆弾や火薬の検索に移り変わっていたことも分かった。

 木村被告が作ったとされる爆弾はネット上で関連する情報が出回っている。銃よりも簡易な構造で、銃弾で標的に命中させる必要もないことから、捜査当局は襲撃方法を検討する過程で爆弾を選ぶようになったとの見方を強めている。銃の材料を購入した形跡は確認されなかったが、兵庫県川西市の自宅からは爆弾に使ったとされる黒色火薬や鋼管が見つかった。

 現場で破裂した爆弾の破片は約60メートル先のコンテナに突き刺さっていたことが分かっている。和歌山県警は木村被告が持ち込んでいた未使用の爆弾を参考にした再現実験も実施し、殺傷能力があったと判断。和歌山地検は23年9月、首相への殺人未遂や爆弾を製造・使用した爆発物取締罰則違反のほか、演説会を開けなくした公職選挙法違反など五つの罪で起訴した。

 一方、木村被告は事件当日、自宅から電車を使うなどして約80キロ先の漁港に向かった。午前11時18分に歩いて現場に到着。同20分には演説会場の聴衆エリアに入り込み、その約7分後に右手で爆弾を投げ込んでいた。自民党のホームページには前日14日夕に首相の来訪が告知されており、木村被告がこのサイトを閲覧した形跡も確認されている。

木村隆二被告の動き

 木村被告は逮捕後の取り調べに黙秘を続けてきたとされる。国政選挙の被選挙権に年齢制限があるのは憲法に反するとして国に賠償を求める訴訟を起こしていたが、事件に及んだ動機との関連は明らかになっていない。公判は裁判員裁判で開かれる見通しだが、日程はまだ決まっていない。

 この事件を巡っては、聴衆の受け付けや手荷物検査が実施されておらず、木村被告の動きを誰も気に留めることがなかった。警察庁は聴衆のチェックが甘く、警護計画に不備があったと総括している。【安西李姫】

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