2025年の大阪・関西万博は、13日で開幕まで1年になった。2度にわたる会場建設費の増額や海外パビリオン建設の遅れに厳しい視線が注がれ、今も開催そのものへの賛否が割れている。万博の意義や開幕に向けた現在の準備状況について、キーマンたちはどう見ているのか。日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長がインタビューに応じた。
キーマン・インタビュー
吉村洋文知事「未来の羅針盤に」
関経連会長どう見る?「情報発信を……」
連載「夢洲の現在」上 万博アクセスに「黄信号」
写真特集・大屋根「リング」などの建設が進む万博会場
海外パビリオンを巡る建設の遅れが懸念されていますが、工事業者が決まっていない国には相当綿密なマンツーマン支援をしています。1年後の開幕に向け、各国の準備は順調ではないかと思います。
丁寧に向き合いながら
2022年10月の国際企画会議で、私は事務総長として参加国に建設業界から寄せられた建設遅れへの懸念や資材の輸送ルートが限られる夢洲(ゆめしま)の状況を伝えました。「急いでください」と働きかけていたが、各国は22年3月末までドバイ万博に出展していて、なかなかエンジンがかからなかったのは事実です。
ただ今は、自前で建設する「タイプA」のパビリオンを予定している(五十数カ国のうち)36カ国で業者が決まりました。十数カ国がまだ残っていますが、政府を中心に私たち日本国際博覧会協会も入り、丁寧に向き合いながらタイプ変更も含めて現実的な判断を呼びかけています。一緒に万博を作り上げていく「同じ船の仲間」ですからね。
万博は一生に1度
万博は世界が未来をどう考え、地球規模の課題とどのように向き合おうとしているのかを知ることができる機会だと考えています。
1970年の大阪万博では、米ソが宇宙政策を巡って覇を競っていました。しかし近年は、超大国よりも小さな国の方が非常に熱心に取り組み、「私たちの国はこういうことを考えている」と発信しています。「心をつなぎ、未来を創る」をテーマに掲げたドバイ万博では、自国の歴史や文化、社会の特色を分かりやすく表現していた北アフリカのモロッコの展示は勉強になりました。
万博会場に行かないと見られないものがあります。そして、会場に足を運ぶことで世界の人々と交流できる機会に恵まれます。私は特に若い人たちに言いたい。「あなたは世界を知っているのか。世界が未来をどう見ているのかを知りたいと思わないか」「一生に1度の万博です」と。世界を五感で体感してほしい。
「前売り」も順調
日本は世界の中でどのような立ち位置で、これからどう進んでいったらいいのか。万博はそのヒントが得られる場所だと考えています。
大阪・関西万博は160以上の国・地域が参加し、184日間の日程で開催される大規模なイベントです。来場する多くの人の記憶に「あの万博で自分の人生はポジティブになったんだ」と刻み込まれるようなものにしたい。抽象的ですが、これこそが私たちが追求する万博のレガシー(遺産)です。
昨年11月末から入場券の前売りが始まりましたが、現在100万枚以上が売れました。前売りは1400万枚を目指していますが、経済界が半分くらい協力してくださる流れになっていて、順調に進んでいると認識しています。
今年10月には万博会場への来場日時の予約が始まります。私たちはそこを一つのターゲットにして、さまざまな魅力あるコンテンツを発信し、開幕への機運醸成につなげていきたいと考えています。【聞き手・井上元宏】
◇大阪・関西万博の概要
・開催期間 2025年4月13日~10月13日(184日間)
・会場 大阪市此花区の人工島「夢洲(ゆめしま)」
・テーマ いのち輝く未来社会のデザイン
・公式キャラクター ミャクミャク
・参加表明国 161カ国・地域(24年3月14日現在)
・想定入場者数 2820万人
・入場料(大人) 1日券7500円(前売りの「超早割」は6000円)
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